いざ参りましょう!
『噴火口はどの辺りになりますか?』
『新富士山頂火口になります』
『それで先ほどの話ですと、八咫鏡に反応があったと……』
『はい。火道の新富士と古富士の境目ぐらいからオロチの反応がありました』
『富士山の内部ということですわね?』
『そうです。反応は少しずつ上昇しているので恐らくマグマ溜りから火道を通って抜けて来ていると考えられます』
『地震の方はどうですか?』
『噴火からすでに太平洋側で50回を超えています』
『まずいですわね……』
徳重さんからの報告を受けて、オレ達はすぐにハーキュリーズに飛び乗り東へ向かった。
ミコトさんはコクピットのモニターに向かって話しかけている。
相手は宮内庁式部局とか言う部署の人らしい。
『まだ大規模な地震は無いですが、このままいけばマグニチュード8以上の地震が太平洋側のどこで起きてもおかしくないですわね』
『恐らくはオロチの活動が影響を与えているのでしょう』
『マグマ溜りの中に潜んで活動と共に上昇してきた。万世史記の記述にもありますし、恐らくは今度こそオロチの本体ですわね』
『我々式部局は官邸サイドの根回しをしておきますので、どうぞ存分にお働き下さい』
『ありがとうございます、一応聞いておくのですが、添柱ヤタガラスの召還は可能ですか?』
『残念ながら、ヤタガラスと宝具三千羽は未だ今回の事態に何の反応もみせておりません』
『やはり一度討死した柱は復活に相当時間がかかるようですね』
『無念です……』
『裕也様とアト様が現れてから、どれくらいの期間で次の段階に進むかは分かりませんでした。しかし想定よりもずっと早く進みましたね……』
ミコトさんはコクピットの階段を降りながら説明を始める。
『噴火の件についてですが、富士山内部にオロチの反応を確認しました』
『内部? 山の中ですか?』
『位置的にはそうなりますね、今後の行動としては、噴火の影響により駿河湾は少々危険なので浜名湖に着水、私と裕也様はそれぞれ柱神に乗り富士山に向かおうと思っていますがよろしいでしょうか?』
『了解です。富士山に着いてからはどうすんですか?』
敵が富士山の中にいるんじゃ攻撃のしようが無い気がするんだが……
『草薙剣にて富士山に穴を開け、天叢雲剣と裕也様の攻撃にて止めを刺そうと考えております』
そういえばミコトさんが小牧山で戦ってたとき、確か草薙剣でビームを切り裂いていたな。
あれで今回も富士山を裂いて目標を晒すわけだ。
『敵の攻撃方法、数、大きさなど一切が分からない状況での戦いになります。ですが富士山のオロチは今度こそ本体である可能性が高いです』
『本命ですか……』
ミコトさんはゆっくり頷く。
『五皇には万世史記という預言書が伝わっておりまして、その中に裕也様とアト様の記述がございます』
『それはどういったものなんだ?』
おりょ? アトがめずらしく興味を示した。
『人類最初の王、アルリムが見た夢が記してあると言われています』
『夢ですか?』
『はい。言わば夢日記ですね』
なんだか結構いい加減なもののような……
『内容は正確に五皇とデシメーターについて記されています』
『それには俺たちのことがなんて書いてあるんですか?』
『そうですねぇ……』
ミコトさんはフッと笑うと内容を語った。
”白き竜が舞い降りるとき、飛来の役目終えるとき”
『お嬢様、浜名湖に着水いたしました』
『それでは、いざ参りましょう』