歴代当主
コーヒーを口に含みつつ部屋をゆっくりと見渡す。
壁の高い位置に歴代校長先生よろしく何枚か写真が並べられていた。
『ここ百年程の歴代当主になります』
『へーーそうなんですか』
見れば一番右端にはミコトさんの写真も並んでいる。
その隣はミコトさんの先代だからお父さんかな?
写真には若い、いや若いと言うよりむしろ子供のような少年が写っていた。
さらに隣の写真に目をやるとそこにも少女の顔。
その隣も……その隣も……
『みんな若いときの写真なんですね』
『写真は全て、家督を相続した時の写真です、私の写真も二年前のものになります』
『みんなこんなに若い時に当主になるんですね。それだと先代の当主はすぐに引退になっちゃいますね』
『当主が変わるのは先代が亡くなった時のみです』
『そうですか……』
アレ? それってどう言うことだ?
当主が変わるのは亡くなった時で皆若くして当主になっている。
飛来家はみんな超晩婚なのか?
いやいやそんな訳ないよな……
と言うことは……
だんだん写真の意味が解りかけてきた……
手が振るえ、カタカタとコーヒーカップがソーサーと音を立て始める。
徳重さんは五皇の定例会議に出れば呪いの意味が解ると言った。
それは会議を覗くという意味ではなく。
本当はこの部屋に入り、歴代当主の写真を見ることに意味があったのか……
『裕也様』
ビクッ!!!
突然名前を呼ばれ、上手く返事も出来ずビクついてしまった。
『後程お話したいことがあります。お時間よろしいでしょうか?』
いつもはこちらの瞳を真っ直ぐに見つめながら話すミコトさんが、今はモニターの向こうから話し掛けている。
ここからではその表情は窺い知れない。
ゴクリとつばを飲み込むことが今の俺には精一杯の反応だった。