砂漠の渇き
グゴゴゴゴゴゴッ……
鈍い音を立てながらゆっくりとコンクリートブロックが浮かびだした!
『ひっ! ひええええええっ!』
あわわわわ、簡単に重力無視しよる!
コンクリートの中心部から黒い何かが広がり始めた。
あえて表現するなら小型のブラックホールみたいな感じだ。
その小型ブラックホールはコンクリートブロックを飲み込むと次第に縮み始めた。
そして豆粒よりも小さくなる。
『裕也様失礼いたします』
そう言うとミコトさんはオレの両目を覆うように右手を被せた。
あっ! うん!
ああミコトさんの手が当ってる!
やわい! やわい! やわわわ!
やわらかーーい!
バシュウウウウウウ!!!
『うお!』
部屋全体を猛烈な光が包み込む。
光が収まると辺りはまた静寂に包まれた。
ミコトさんはオレの顔に右手を添えた状態のまま、自身は左腕で光をガートしていた。
徳重さんはちゃっかりサングラスをしている。
あっ……ミコトさんが添えた手を元に戻してしまった!
あああんんん……
『裕也様』
ミコトさんに呼ばれて我に帰る。
『うお……あっ……あれは』
祭壇の上には見事に金塊が積まれていた。
ミコトさんが積まれた金塊の一つを手に取りしげしげと眺める。
『まあ、こんなところですわね』
徳重さんも金塊を両手に持ち入念に眺める。
『お見事で御座いますお嬢様。均等に分割されており、形も申し分御座いません』
『裕也様お一つどうぞ』
そう言うとミコトさんはオレに金塊を一つ手渡した。
おっ……重い。
見た目は小さいのだが持ってみるとその比重に驚く。
まっ……間違いない……金じゃあ、ゴールドじゃあこりゃあ。
本当に重い、金てこんなに重いのか……
人生初体験のズシリとした重みを感じ驚いていると。
『祭壇上の金塊は今回の記念に差し上げます。裕也様のお部屋に運んでおきますのでご自由にお使い下さい』
『ご自由にと言われても……』
正直、金の延べ棒なんて渡されてもどうしていいか分からん。
ミコトさんはウーンと唸った。
『田○貴金属さんにでも持ち込んでいただければ、すぐに現金になりますわ』
『アハハハハそうですかね……』
ミコトさんはよく理解して無いようだが。
一介の高校生がいきなり金の延べ棒持ち込んだら、間違いなく窃盗かなにかを疑われると思う……
大体未成年が売買出来るんだろうか……
正直、ネットのフィルタリングを解除してくれたほうがワシは何倍も嬉しいのう……
砂漠の渇きが如く思いで金塊を見つめるオレだった。