核種変換
『平時であれ有事であれ、最後にモノを言うのは資金ではなく資源です』
なんだか物騒な話になってきたような……
『どんなに優秀な技術があったとしても資源が無ければ生かせません』
『まあ、確かに……』
『簡単に言いますと我々五皇は、この世のあらゆる物質を無尽蔵に創り出すことが出来るのです』
え……それって……
『も……もしかして金とか銀とか創れるんですか?』
『常温で存在可能かつ人体に無害という意味では容易い部類ですわ』
容易いて……
なんとなくミコトさん達がお金持ちの理由が解ってきた。
その気になればいくらでもお金なんて創ることができるわけだ。
お金と言うか金そのものを。
『一部の資産家が、基軸通貨を発行する権利を持っていますが所詮は紙切れです。渇きの前では百万ドルより一杯の水ですわ』
そう言うとミコトさんはツカツカと歩き出す。
少し離れた場所に祭壇のようなものが見える。
祭壇は神社とかにある石で出来たテーブル状のものだ。
その石のテーブルにはお供え物だろうか?
何かがテーブルの上に置いてあるようだが、白いシーツが被っている。
ミコトさんはシーツに手をかけると一気に剥ぎ取った。
何か重要なものが置いてあるのか?
もしかしてスサノオさんのミイラとか?
なんだか少しドキドキしながらシーツの下から現れるものを注視する。
アレは!
シーツの下から現れたのはどーーみてもコンクリートブロックだった。
ブロックが何個か祭壇の上に積んである。
あれ? なんだか拍子抜けした。
何故にコンクリートブロック?
『砂や水などをセメントで固めたコンクリートブロックです。本当はあまり混じり気の無いものがやりやすいのですけど……』
やっぱり正真正銘コンクリートブロックだ。
『錬金術の腕前は核種変換用材料純度、そして変換後の生成物がいかに美しい形をしているかで決まります。お嬢様は歴代当主の中でも傑出した錬金術師であられます』
徳重さんが得意げに追加説明をする。
『今から裕也様の遊興費を核種変換いたします』
今、かなり変わった日本語の組み合わせを聞いた気がするが、なんだかもう色々と慣れてきたよ……
ミコトさんはそう言うと草薙剣に手をかけた。
カチン!
ミコトさんはすでに刀を鞘に納めている。
一瞬、刀に映った松明の照り返しが暗闇に閃いたが、オレにはその程度しかミコトさんの居合い抜きは捕らえられなかった。
はっ……速過ぎるぜ!
エピゴノスに乗っていればスサノオさんの動きはなんとか捕らえられるが、生身のミコトさんが放つ居あい抜きはオレなんかではまさに目にも止まらぬ速さとやらだ。