大国柱
壇ノ浦から数日ほど経ったある朝。
『五皇の定例会議に出席なさるのであれば、一度ご覧になって下さい』
そう言われて、朝早くから土蔵の入口を跨いだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
暗い大きな穴の中を降りていく。
円柱状の壁に沿うように螺旋階段が続く。
ちょうどエピゴノスの内部とは逆のカタチになる。
エピゴノスの内部は白い螺旋階段が天井に昇っていく感じだったが、こちらは暗い穴を螺旋階段が降りてゆく。
どれくらい螺旋階段を降りただろう?
しばらく行くとかなり広い空間に出た。
辺りは松明に照らされ朱色の光が俺たちを包み込む。
『こちらですわ』
ミコトさんがそう言って顔を向ける先にそれはあった。
恐ろしく太い樹だ。
直径でどうだろう20mくらいはあるだろうか?
松明に照らされて、うっすらと静かに年月を揺らしている。
『もしかしてこれが以前話していた、スサノオさんの大黒柱ですか?』
『ハイ。そしてここが錬金の間と呼ばれる場所です』
『錬金?』
『古代より五皇に伝わる奥義です』
『奥義?』
『五皇の当主は核種変換を行うことが可能なのです』
うーーん、さっぱりわからん。
『かくしゅへんかん?』
ミコトさんは両手を合わせ楽しそうに問いかけてきた。
『裕也様、富とは何だと思いますか?』
『富?』
はて?
また変な質問だな。
『普通に考えればお金かなぁ……』
『本来、硬貨や紙幣などの銀行券は、物のやり取りを円滑にするために生まれたものに過ぎません』
『お金は道具でモノにこそ価値があると?』
『そうです。富とは資源です』
ミコトさんはそうキッパリと言い放った。