ミコトその1
『お嬢様、小牧山上空に到着いたしました』
ミコトは窓からのぞく雲の様子をじっと見ていた。
執事である徳重の呼び掛けに少し間を置いて答える。
『そう……とうとう来たのね……この日が』
自宅から小型ジェットで飛び立って30分が経っていた。
『政府には色々根回しも終わりましたし、鏡も上手く使っているようです、そろそろ頃合いかと……』
『徳重行ってくるわ、ハッチをお願い』
『お嬢様……御武運を』
ミコトは頷くと刀を握り締めた。
徳重がコクピットの専用レバーを引く。
ゆっくりと機体側面のハッチが開き、猛烈な風と上空の冷たい空気が機体へと入り込む。
空気はとても冷たいが、少し緊張した体をほぐすのに調度良く、むしろ気持ちが良いくらいにミコトは感じていた。
風の音でかき消されつつも、眼下の敵に言い放つ――――
『飛来 命! 参ります!』
ミコトは一気に機体から飛び出した。
パラシュートなどは一切着けていない、
手にするのは刀一振り――
猛烈なスピードで落下していく。
序々にミコトの体は緑色の光に包まれる。
ミコトは鞘から刀を引き抜き、刃を落下地点に向け叫んだ。
『神須佐能袁命!』
その瞬間ミコトの体を包む緑色の光はより一層輝きを増した。
そのまま光の塊は小牧山の頂上付近で弾ける。
閃光ーーー
そして現れたのは巨大な鎧武者だった。
小牧城を跨いで巨大な鎧武者はそびえ立つ。
その大きさは本来ヒトガタのモノとしてはありえない大きさだった。