昼食
アトに俺の色々な出物を処理してもらい食堂へと移動する。
食堂ではソーニャさんがナプキンを膝に乗せて待っていた。
『ソーニャ、はしたないですよ』
『だってーーみんな遅いんだもんにゃあ』
『もんにゃあ?』
『それより今日はミコトがお弁当作ったって本当?』
『まあ、一応頑張ってみました』
そう言うとミコトさんは包みの結び目を解いた。
三段のお重から現れたのは御節かと見紛う品数の豪華な料理だった。
『はにゃーーん♪♪♪』
『おおっ、凄い』
あわびの煮付けとか家庭では普通作らないだろこれ……
『このホタテとかおいしそうですね』
『ポアレといいますか、フライパンで焼いただけですわ』
『このカップに入っているのはなんですか?』
『リエットですわ、ソーニャが好きなので作ってきました』
『パンにリエットつけて食べるのも好きだけどソーニャはお稲荷さんも好きだにゃあ』
『はいはい、入っているでしょ』
ソーニャさんは今にも料理に飛び掛りそうな勢いだ。
『少し量が多すぎませんか?』
流石に三人前にしては多いような気がした。
『裕也様は御存知無いと思いますが、ソーニャは大食漢で非常に量を食べるのです』
『大食漢とは失礼だにゃ! 女の子だから大食女だにゃ!』
ソーニャさんがロシア人とは思えないツッコミを入れる。
ああ、そう言えば。
『アトさんも食べる?』
昨日は食堂に行く前にアトはいなくなったし、食事時一緒にいるのは初めてのはずだ。
『いいや、食べようと思えば食べれるが食事は私に必要ない』
ううむ、やはりそうか。
アトと話している間にミコトさんは小皿にある程度俺の分を取り分けてくれた。
『あっ、自分でお重から取りますよ』
『いいえ、ソーニャとの食事は事前にある程度取り分けておいたほうがよいので』
?
それでは全員で手を合わせ。
『いただきます』
ズバババババババッ!!!
え? ソッ……ソーニャさん?
はっ、速い!
なんちゅう速さだ! あまりの速さにソーニャさんが少しブレて見えるぞ!
三倍速くらいで動画再生してるみたいだ!
あっという間にお重の三ブロック程が空になる。
このままでは全ブロックが制覇されてしまうぞ……
そんなソーニャさんを気にもしないで黙々と食事を取るミコトさん。
『裕也様お口に合いませんか?』
呆気に取られる俺をミコトさんが気遣ってくれた。
『いえ、まったく、おいしいです』
みんなでキャハハ、ウフフと楽しく食事するのかと思いきや現実は殺伐としていやがる。
自分の分だけでも味わいながら頂こうと箸を動かしていると生徒らしき人がミコトさんに話し掛けてきた。




