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おそロシアーーン!

挿絵(By みてみん)


『おそロシア――――――ン!!!』

『ごはっ!!!』


 中からいきなり白人女性がミコトさんに向かって飛び出た。


 ごはっ!!! などどミコトさんから今まで聴いたことの無いフレーズが飛び出す。

 そのまま二人は廊下に倒れ込んだ。

 いや、正確には白人女性がミコトさんを押し倒した格好だ。

 ミコトさんに頬擦りしながら白人女性はこれまた流暢な日本語を話しだす。


『どこ行ってたのよん! ミコト! またお勤め?』

『もう! ソーニャ! ちょっと! あっ! やめて! あっ!』


 ミコトさんは白人女性を振り解こうともがいている。


 なんとも目の保養になる光景だ!


 しばらくすると白人女性がオレを指差しピタリと止まった。


『ミコト、誰? この人』


 ミコトさんはその隙に起き上がるとパタパタと服を払い出した。


『ソーニャ! あれほどはしたない行動は慎むようにと普段から言っているでしょ!』

『だってミコトが黙って留守にするから寂しかったんだよ!』


 それを聞いたミコトさんはウググッとタジロギながら。

『確かに、なんの断りも無く研究室を空けたのは謝りますわ』と答えた。


『あの、ミコトさん彼女は一体……』


 ミコトさんはハッと我に帰る。


『えっ! あっ! 失礼しました! 彼女の名前はソフィア・ロマーノヴナ・マルメラードワと申します』


挿絵(By みてみん)


『ソーニャでいいよん、ちなみに出身はロシアのペテルブルグだよん』


 ソーニャさんがニッコリ笑いながら右手を差し出した。

 すかさずオレも握手する。


 なんというか……若いロシア人の女性は凄すぎる。

 美しい。


 よく妖精なんて表現されるがまさにそれ!

 真っ白な肌に明るいブロンド!


 蒼い瞳は本当にオレと同じホモサピエンスですか?

 などと聞きたくなる程だ。

 しかも制服、胸元が結構開き気味な感じの着こなしで。

 正直、目のやり場に困るぅ。


『はじめまして、中島裕也って言います。今日からこの学校にお世話になります』

『今日から? 転校生?』

『裕也様は今日からここで日本の高等学校教育を受けます』

『裕也様? なして様付け?』


 当然の疑問をソーニャさんは口にする。


『裕也様は我が飛来家の重要な客人になります』


 ミコトさんはオレのことをかなり掻い摘んで説明した。


『重要な客人?』


 ソーニャさんはそう言うとなにやらオレに顔を近付けだした。

 そしてそのままクンクンとオレの匂いを嗅ぐとなにやらウンウン頷き。


『さてはミコトのお勤めに関係があるのかにゃ?』


 などとズバリ、関係を言い当てた。

 こちらが言い澱むとさらに追加する。


『フフッ、しかもこの匂いは童貞だにゃ』


『『なっ!!』』


 思わずオレとミコトさんでハモッてしまう。


 ソーニャさんは得意気にフンフン頷き、顎に手を当てながら。


『色々、思春期でそらーーもうそっち方面の不安があると思うがにゃん←? 大丈夫、ミコトもバッチリ処女ゆえに君とはいい感じに御揃いだにゃーーん、それに……』

 

そう言うとソーニャさんはグイッとオレにヘッドロックをかまし。


『ミコトの大事なお客さんなら、いつでもソーニャちゃんがお相手するにゃん』 などと胸でグリグリなさせられる。


 あっ! もう! いや! やめて!


 精一杯の抵抗するフリをしつつミコトさんに視線を移す。


 笑ってる……今まで見たことないレベルで笑ってる。


『ソーニャちょっと奥に来なさい』


 完全な命令口調で研究室を指差した。


『? なに? 急にどうしたの? おみやげでもあんの?』


 いいから、いいからと手招きするミコトさんに連れられて二人は研究室に入っていく。

 最後にミコトさんは笑顔で振り返り。


『裕也様は私が”終わりました”と合図するまでそちらでお待ちください』


 そう言い残し研究室の扉を閉めた。


『エッ! ウソ! ミコト! イダダ! もげる! モゲル! !!!!!!!!』


 人体にもげて良い部分は無いはずだが確かにそう聞こえた……

 プシューと自動扉が開くと中からミコトさんが顔を出し。


『終わりました、さあお入りください』


 先程と変わらぬ全開の笑顔でそう合図した。


『お邪魔します……』


 中に入るとソーニャさんが左胸を抑えてうずくまっている。

 半ベソ掻きながらソーニャさんは。


『酷いよ! ミコト! ソーニャの方が大きいからって!』


 などと抗議の声を上げる。

 そんなソーニャさんの前にゆっくりとしゃがみ込むとミコトさんは、

 

『もう片方もかしらソーニャ?』


 そうニッコリとソーニャさんに語りかけた。

 ソーニャさんは水浴びした犬みたいにブルブルと首を振ると。


『じょっ……冗談だにゃーー』


 現時点で恐らくソーニャさんが出来る限界の笑みで答えた。


『もう、ソーニャったら冗談ばっかり!』


 キャハハ、ウフフと二人は笑いあっている。


 そんな二人を見つめながら、

 今後絶対にミコトさんの機嫌を損ねることはしないぞ!

 オレは心に硬く誓うのだった。

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