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ざっくり

挿絵(By みてみん)


 そうこうしているうちにパラボラアンテナはフワリとまるで重力を無視するように起き上がった。

 とりあえず両手で鉄パイプを構える。

 モニターの中、エピゴノスは電気が点いた蛍光灯を持っているような状態になっている。

 外側から見るとこうなっているんだこの鉄パイプ……

 まずは奴に近づいて斬りかかってやろうかと考えたのだが、どうやって近づくんだ?


 歩く……歩く……


 えーーと、どうやればこのエピゴノスは移動してくれるんだ?


『アトさん、どうやってエピゴノス移動するの?』


 武器が欲しいとかそれ以前に知るべきことだった。


『そうだな……飛んだり歩いたり空間割ったりだが』

『飛ぶ?』

『そうだ』


 最後の空間割るのはここに来るとき使ったやつだろう。


『とりあえず飛ぶ方法を教えて欲しい』


 歩くとなるとこのサイズだし、人や建物を踏みかねない。


『空を飛ぶイメージをすればいい』


 空なんて飛んだことないっちゅーーの。


『空なんて飛んだこと無いからイメージできないんだが……』


 アトは心底困った顔で悩んでいる。


『こっちもそう言われても教えようがないぞ』


 空を飛ぶ夢ならたまに観るけどそういうイメージかな……


 アトとお互い悩んでいるとアンテナはグルグルと触手を動かし始め、触手がムチのように襲い掛かってきた。

 巨大な触手がモニターいっぱいに迫る。


 ヤバイ! ヤバイ!

 動け! 動け! 動け!

 浮け! 浮け! 浮け!

 のわーーーーー!!!


『うおっ!』


 なりふり構わず身をよじってジャンプする。

 うん? アレ?

 勢いよく跳ねたが着地しない……


『う……浮いてる……』


 ジャンプの弾みで跳ねた高さでオレの身体は止まっていた。

 フワフワと鳥籠の中をオレの身体が浮いている。


『やればできるじゃないか』


 アトはおき楽に言ってくれる。

 飛べなかったらモロに触手食らってたぞ!

 なんとかアンテナの触手は避けれたが、まだフラフラして上手く飛べない。


 えーーと、飛ぶイメージ……イメージ……


 目を瞑り意識を集中する。

 不思議な一体感が身体を包み込む。

 外気の感触……

 エピゴノスの手先、足先までもが自分の身体であるかのような感覚。


 落ち着け……落ち着け……


 呼吸を整えゆっくりと目蓋を開ける。

 エピゴノスは空中でピタリと止まり構えを取っていた。


『ほう……やはり筋がいいようだな……』


 やはり筋がいい? やはりって……なんなんだアトのやつ?

 なんだろう?

 目を閉じたとき不思議な感覚があった。

 懐かしさとも違う。

 言うなれば身体が勝手に覚えていたような。

 まるで別人がオレの体を動かしているような感じだ。


『上手く動かせ過ぎて、少し気持ち悪いなコレ……』


 パラボラアンテナは触手をウネウネさせて威嚇している。

 やる気だなこの野郎が……

 アンテナに向かって滑るイメージを頭に思い浮かべる。

 するとエピゴノスがスッとアンテナに向かって移動しだした。


 コッ! コレか!


 いけそうな気がしてきた。

 そのまま移動を加速させるイメージをする。

 グン! とエピゴノスは空中でさらに加速した。


 よし! やってやる!


 鉄パイプを握り締め加速と共に構える。

 パラボラアンテナは触手を前面に収束させて防御体勢になっている。

 とりあえず牽制のつもりで剣を打ち下ろす。


『うおおおおりゃぁぁぁ!!!』


挿絵(By みてみん)


 ザクッウン!!!


『え?』


 あっさりと光る剣は触手ごとパラボラアンテナを袈裟斬りに右斜め上から左下に向かってサックリと切断していた。

 まるで抵抗なんて感じない。

 薄いコピー用紙にカッターの刃が上手い具合に入ったような。

 まさに流れるような勢いで光る剣はアンテナを切り裂いた。


『キイイイイイィイィイイイィィ!!!』


 アンテナが悲鳴にも似た鳴き声を上げる。

 ズルりと切断された上部分が斜めにズレ落ちた。


 ドズーーーン!!!


 音に押されてハッ! と我に返る。

 アトは平然とした顔をしている。

 さっきアトがその気になればこの星をも砕くと説明したのがなんとなく理解できた。

 こっ! この光る剣は危険だ! 威力があり過ぎる!


 などど自身の武器に慄いていると切断されたアンテナは序々に全体が発光しだした。


 爆発するのか!?


 しかしそのまま光度を増すと斬られた部分も含めてスッと消えてしまった。


『消えた?』

『本体のところに帰ったのさ』


 アトはつまらなそうに言った。


 そうか……ひとまず片付いたのか……


 しばらく呆然と辺りを眺める。

 小牧山の空中から見える景色は地獄絵図そのものだった。

 あちらこちらで火災の煙が上がり。

 焼け跡や戦いによってエグられた地面がいくつも口を開けている。

 車で逃げようとしている人々。

 ガレキに埋まった人を助けようとしているヒト。

 アイスクリームをスプーンで削ったように続くクレーターは春日井あたりまで続いている。

 人々がこちらを指刺し叫んでいる。

 途端に全身から汗が……


『ハアッ……ハアッ……ハアッ……ハアッ』


 あっ……アレ?


 身体からチカラが抜けていく……


 足がガクガクする……


 呼吸が……荒くて……


『あっ……アト……』


 意識が……

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