誰が放すかこの馬鹿が!!!!!
ああ、デシメーターの気配が消えてゆく。
無事にロンギヌスの槍はデシメーターを打ち抜きその役割を果たした。
万世史記、ザ・ヒストリーの予言、五皇の務めが後は残っている。
『マリア、本当にすみません』
『え?』
『私だけならいくらでもこの命を差し出すのですが、このままでは貴方まで巻き込んでしまう』
『いえ、ヨシュア様、私は幼き日よりこの光景を待ち望んでおりました、そしてそれは貴方の子孫、2000年間一族が待ち望んだものなのです』
『本当にそうでしょうか……』
『ハイ、私は貴方とこの地に降りること、一切の悔いはありません』
ヨシュア様は私を慈しみ優しく撫でてくれている、その瞳に映るのは私なのだろうか? それともずっと過去のマリア様なのだろうか……
『私は神に祈りました、人々が互いに想い助け合い、生きる世界を、その為ならば私の命などいくらでも捧げると、しかしマリア、貴方は違う、貴方の命は貴方のものです』
ロンギヌスの槍はデシメーターを破壊しそのままこちらへ向かってくる、伝承の通りだ、巨大な光がローマ中を包む、まるで神の威光が降りて来るような眩しい光が辺りを包み込む。
『マリア……』
『ヨシュア様……』
これでお終い――――――――――――
そう覚悟を決めた時だった。
―――ガウッ!!!!!!!!!―――
ああ、この感覚―――――――――
えーーと確かオロチと初めて戦った時だから、これ2回目かな?
空間が轟音を響かせ割れてゆく。
ガラガラとキラキラと割れてゆく空間の先には、今度は光る槍が映し出されていた。
両腕を広げ槍を抑え込む。
『アトさん! ありがと!』
アトは軽く右手を挙げた。
なんか嫌味の一つも無いところを見ると、かなりアトさん疲れているみたいだな。
『ちょっとあんた! 何やってんのよ!』
『誰だ? マリアか?』
モニターにはマリアが映し出されている、あの隣にいるのがイエス様か。
『何って、何が!』
『だから! なんでロンギヌスの槍を捕まえてるのよ!』
『え? 何でって……』
何を言ってるんだマリアは?
『だから、このままロンギヌスの槍を放っておいたらマリア達の柱神に刺さっちゃうだろ!』
『だから! それで良いのよ!』
『いや、良い訳ないだろ!』
『あんたね! こっちの事情も知らないで勝手なこと言ってるんじゃないわよ!』
『な!?』
『こっちはずっとこの日を待ち望んでいたの! 2000年間一族が悲願としてきたデシメーターの封印なの! 万世史記にも記された最後の務めなの!』
『けど、ミコトさんみたいに人柱にならなくても、デシメーターはなんとかなるかもしれないじゃないか!』
『ミコトの時はたまたま上手くいっただけかも知れないでしょ! そもそも簡単に槍をどうにかできるわけない! これ以上はアンタも危険なのよ!』
『けど……』
『けどもクソも無いわ! いいからアンタ、槍を離しなさいな!』
『あのさあ……』
『何よ!』
『最後に一つ聞いていい?』
『だから何よ!』
『この槍を放したらオマエ死ぬんだよな?』
『そうよ! そんな覚悟はとっくに出来てるから、つべこべ言わず放しなさい!』
『誰が放すかこの馬鹿が!!!!!』
『へっ?』
うーーむ、久しぶりに頭きた。
『アト! エピゴノス腕いっぱい生えるモードだ! 槍を破壊する!』
アトさんはあーーあ、やっぱりなって顔してる。
『槍の破壊か……』
アトさん気乗りしないみたいだな。
『やっぱり難しいのか?』
『いや』
『じゃあなんなんだよ……』
『男の槍を破壊するってのは、女にとって特別な意味があるのさ』
女にとって特別な意味? 訳分からんな。
『女、アトさん女なんて感覚あるんだな』
『失礼な奴だな』
エピゴノスが腕いっぱい生えるモードに変形を終えるとモニターにイエス様らしき人物が映し出された。
『少年! すまない、私が不甲斐ないばかりに君に迷惑をかける』
『いえいえ、お気になさらず』
イエス様の後ろでマリアがなんかギャーギャー叫んでるが気にしない。
『私もこの人柱については疑問が残る、私だけなら構わないがマリアを死なすわけにはいかない』
イエス様はぐっとガッツポーズを取る、そして――――――
『気にせず、バッキリ槍を折ってくれ!』
『分かりました!!!』
流石イエス様だ、話が分かる! ヨッシャやってやるぜ!
といっても、さてどうやるか、正直さっきからずっと槍を抑えているが、これをここからどうこう出来る気がしない。
『くっ!』
少しずつ押されてる気さえする。
『くそ! どうすりゃいいんだ』
『仕方無いな』
『アト?』
『下の腕4本を借りるぞ』
『お、おう!』
アトは俺と槍の間に滑り込む。




