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始まりの夢
パチン!
アトが指パッチンをする。
空間がガラスのように割れていく。
その先には巨大なパラボラアンテナが映し出されていた。
アンテナは蓄積したエネルギーを今にも解き放とうとしている。
『イヤ! イヤ! 無理だって!』
『ボヤボヤするな』
臨界まで達したエネルギーが一気に解き放たれる――――
『うおっと!』
思わず右手を前に出す。
オレの動作に連動して、エピゴノスの右手がパラボラアンテナのエネルギー波を受け止めた。
圧倒的な光の奔流。
なんとか後ろにいる神様への直撃は防げたようだ。
『あっ……アトさん!』
『なんだ?』
あれ? なんだっけ――――
そこで光は溢れ
闇へと変わり
深い海の底
黒い泥の中
沈み込む
沈み込む
……………
たいした望みなんて無い
平穏な生活
平穏な世界
それが心からの望みだ。
こんな言い方をするとおかしな感じがするけれど。
心の底から
魂の中から
本当にそう思う……