第X話 クリスマス 番外編。
聖なる夜。
それは大切な人と過ごす、かけがえのない時間。
「いやぁ……柚子ちゃん。料理美味しいよ」
「……ありがとうございます」
机の上にはローストチキンやケーキ、手料理とは思えないような豪華な食事が並んでいる。これを柚子ちゃんが俺のために作ってくれたと思うと……。ニヤニヤが止まらない。
「……あ、あのさ!実は柚子ちゃんのためにプレゼントを用意したんだ!」
「……本当ですか?」
「はい、これ。開けてみて」
「……ネックレスだ……かわいい……!」
「似合うと思ってさ。着けてみて」
「はい……」
少し照れくさそうにネックレスを着けている。嬉しそうなのが側から見てもわかる。……可愛いなぁ。給料3ヶ月分は痛い出費だったが……幸せそうな顔が見れて何よりだ。
「……に、似合ってますか?」
「すっごい可愛いよ」
「……もうっ。……あ、あの……実は……私からもプレゼントがあるんです」
「え!?本当に!?」
「店長さんに似合いそうだなと思って買っちゃいました。……開けてみてください」
「なんだろうなぁ……お!こけしかー!……ん?こけし?」
「……よかったら着けてみてください」
「え……あ、うん」
こけしの着用方法がよくわからず、とりあえず肩に乗せてみる。……なんだこのシュールな絵面。正解なのだろうか。
「……似合っててかっこいいです」
「う、うん。ありがとね」
「……あの……店長さん」
「どうしたの?」
「今日は……ずっと一緒にいたいです……」
「え!いや!親御さんとかが心配しちゃうよ!」
「……今日は友達の家に泊まってくるって言っちゃいました。……えへへ」
「そ、そうなんだ……!」
「……私、店長さんのことをもっと知りたいんです……」
「い、いやでもそういうのはちゃんと大人になってからじゃないと……」
「……だめ……ですか……?」
「い、いや…………だめではないんだけど………ってあれ?」
「どうしました?」
「……そういえば、なんで柚子ちゃん俺と普通に喋れてるの?」
「夢だからですよ?」
「え?」
「ふぇえええええええええ!!!!」
◇
嫌な夢を見た。
とても嫌な夢を見た。
……クリスマスなんて消えちまえ。




