第56話 あげる。
「いらないライターってあります?」
「えっと……ちょっと待ってくださいね……。あった。これでいいですか?」
「いつもありがとね。もらってくよ」
コンビニは景品のライターがかなり余っている。1カートン買うとおまけでもらえるのだが、このキャンペーンが終わるとどんどん溜まっていく。貯めてても捨てるだけだから、うちの店では常連のお客さんとかに聞かれたらあげるようにしている。
「店長、なんてミスしてるんですか!」
「え?」
なんか急にバカに注意された。
「さっきお金をもらわずに商品渡してましたよね?それが間違っていることぐらい僕でもわかりますよ!!」
「ああ。お前には複雑なのかもしれんがさっきのは景品のライターだからあげちゃって問題ないんだよ」
「景品のライターをあげる?そんなのダメに決まってるじゃないですか!!僕もお客さんに聞かれたら、たばことかお酒とかあげますけど、景品のライターをただであげたら、カートンで買ったお客様が損じゃないですか!」
「いや、お前珍しく正しいこと言っていると思うんだけど、お前ただでうちの商品あげたりしてんのか?」
「ええもちろん!ただであげますよ!!!ここをどこだと思ってるんですか!」
「ふざけんなよ」
最近在庫が妙に減ってると思ったらそういうことだったのか。
こいつの給料引いておくか。