第3話 捨てる。
「パンはパンでも食べられないパンってなーんだ?」
「フライパン」
いまどき小学生すら出さないような、なぞなぞ出しやがって。
今日のシフトもあかっちと一緒だ。
「正解は、賞味期限が切れたパンでした。はい、これ廃棄っす」
「うわ……まじか」
あかっちの手には、廃棄のパンをたくさん入れたかごを持っていた。
「売れると思ったんだけどな……」
「発注しすぎなんすよ」
たしかにその感は否めない。新商品のドーナツが売れると思い、多めに発注したのがダメだったみたいだ。
「しゃあねえ……廃棄登録しといてくれ」
「こんだけ廃棄しちゃうの勿体ないっすね」
「まあな」
「お客さんにあげたらいいじゃないっすか。どうせ捨てるぐらいなら」
「いや……あげるのも面倒なんだよ」
前に捨てるぐらいならくれと言うお客さんがいて、あげたことがあったが、その後、毎日のように、廃棄をもらうためにそのお客さんが来て、色々と面倒だった。
さらにその姿を見て、「不公平だ!私にもくれ!」という人が沢山いて、もはや炊き出し状態だった。うちの店がホームレスの間で話題になったのはこの時期である。
「経営も大変なんすね」
「店長の苦しさがわかったか?」
「とりあえず腹減ったんで、このパン食っていいっすか?」
「お前人の話聞けよ」