第27話 におい。
「それじゃ今からレジの使い方教えていくから」
「げほっ……わかりました」
今日のシフトは以前採用した七海ちゃんと一緒だ。こういう真面目な雰囲気をぷんぷんさせてる子が働いてくれると、ちゃんとした店に見えるからそういう点では非常にありがたい。
「まずお客さんが来たら、この機械で商品のバーコードをスキャンしてね」
「げほっ……はい」
「注意してほしい点としては、ただ商品をスキャンするだけじゃなくて、ちゃんと読み上げ登録をしてね。あ……読み上げ登録ってわかる?」
「げほっ……商品をスキャンしたら、げほっ……値段と個数を言うことですよね?」
「そうそう。それで合ってるんだけどさ、俺が喋るたびにわざとむせるのやめてくれないかな」
「ぎくっ。わざとだと気づいていたのですね」
「そりゃ気づくよ」
部屋臭いって言われた後、匂いに関してはめっちゃ敏感になってんだからな。あの後消臭剤の他に、空気清浄機も買ったし、洗剤もネットで評判いいやつ買ったし、働く前には必ずブレスケア食ってるし、むしろいい匂いぷんぷんだぜ。
「でも勘違いしないでくださいね?たしかにわざとオーバーリアクションをしていますが、店長さんが臭いのは事実ですよ」
「え?……そ、そんなことないだろ」
「私と目が合うたびに照れくさそうにしています」
「……してねえし、全然上手くねえよ!」
面接の時から思うことだが、ずっとこの子に振り回されている気がする。