第229話 ちがう。
「……最近柚子ちゃんとはどうなんすか?」
「どうって……普通?」
「普通なわけないでしょ」
柚子ちゃんの機嫌が悪いことにも何だか慣れてきて数日後。あかっちから誘われてファミレスに来ている。
注文したものを完食した後、今から本題に移るぞと言わんばかりの雰囲気を漂わせてくる。……察するに今回の飯は、俺に対して言いたいことがあって誘って来たんだろう。
「んー?話しかけないでくださいとか、嫌いとか……言われるぐらい?」
「どんなメンタルしてんすか……。普通そんなこと言われたら傷つくでしょ」
「いや、あかっちとか七海ちゃんのがひどいこと言うだろ」
「…………まあ……そうかもっすけど…………」
「……まあいいや。呼び出したからには何か聞きたいことがあるんだろ?」
「……そうっすね。単刀直入に聞きますけど、バーベキューの日、コンビニで柚子ちゃんと何があったんすか?」
「……お、お前には関係ないだろ」
「柚子ちゃんから相談を受けてたんで、関係あるんすよ」
「……そうか。あの日、あかっちが無理やり二人っきりにさせようとしていたから、何となく察してはいたけどさ」
「それでどうなんすか。柚子ちゃんに聞いても全然教えてくれなくって」
「……俺が説得したおかげで、柚子ちゃんには何故か嫌われてしまったが、何とか辞めさせることは回避できたよ。最善は尽くしたと思う」
「……???マジで言ってる意味がわかんないんすけど、何を説得したんすか……?」
「は?相談受けてたんじゃねえのかよ。柚子ちゃんが退職届を俺に渡そうとしたからさ、バイトを続けるように説得したんだよ」
「…………何なんだよこのハゲ……」
「……おいおい!独り言が丸聞こえだぞ!」




