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第211話 不採用。2

「単刀直入に聞くけどさ、なんでうちの店でもう一回働きたいんだ?」


 面接をすると言っても、改めて自己紹介だの趣味だの特技だの聞いたって何の意味もない。


 ……少しの間だが一緒に仕事をしてたんだ。ある程度のことは大体わかる。結局は何故また働きたいのかを聞けばそれだけでいい。


「……働いてた時が僕にとって一番楽しかったんですよね」


「……」


「一回記憶を無くして改めて気が付いたんですけど、僕って正直馬鹿だったと思うんですよね」


「その通りだ」


「当時の僕はあまり意識していませんでしたが、店長や他の皆が上手くフォローをしてくれたから働くことができてたんだなって思います」


「全く持ってその通りだ」


「たしかに僕はミスも多いと思いますし、皆に迷惑かけてばかりだったと思います……。でも、あの時の皆で働きながらわいわいやってた雰囲気が本当に好きで……もう一度また、戻りたいんです」


 ……おいおいちょっとやめてくれよ。冗談っぽく俺が返してるのに何だよこの真面目な雰囲気。「ちょちょーい!店長も僕のことバカやと思ってたんかーい!」みたいなツッコミしてこいよ。空気重すぎるんだけど。


 いつもの雰囲気と違って、ちゃんと自分の中で言いたいことを整理してきたのか言葉の一つ一つに重みを感じる。……今日のためにこいつなりに精一杯考えてきたんだろう。


 当時柚子ちゃんと引き離すためにクビにしたとかもう絶対言えない。


「僕は本当に馬鹿で、不器用で、どうしようもない奴だと思うんですけど……。また、もう一度、この店で働きたいんです」


「……」


「どうかよろしくお願いします。もう一度また働かさせてください」


 真剣な態度で頭を下げている。声や表情などから何時に無く緊張していることが伺える。


 ……あいつも真剣なんだ。俺も腹を括ろう。


「……大体話はわかった」


「……はい」


「もう特に聞くこともないし、電話で後日連絡するのもあれだから、採用の結果を今言うわ」


「……はい」


「不採用だ」

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