第210話 不採用。
店を経営する以上、金というものは想像以上に吹っ飛んでいく。
商品を仕入れるのにだって当然金はかかるし、何もしていなくてもただ店を維持していくだけで相当な額が吹っ飛ぶ。客が来なくても金は消える。客が来ても売れなければ金は消える。……だから普段から節約を心掛ければならない。
うちのアルバイトには水を出しっぱなしにするなとか、電気は使い終わったらすぐ消せとか、どんなに寒くても暖房をつけるなとか、色々と言っているが、節約できる部分にも限界がある。そこで分かりやすく金を減らす方法が人件費を削ることだ。
究極言ってしまえば俺がシフトを全て一人で回せばかなりの人件費が浮くことになる。しかし俺だって24時間なんて働きたくない。家で午後になるまで布団で爆睡していたい。休みだって取りたい。だから最低限店を回せる人数で、尚且つ優秀な人材を雇うことが大事になってくる。
そんなわけで俺は今、バカが書いてきた履歴書を見て絶望している。
◇
今日は前から予定していたバカと面接をする日だ。念のために履歴書を持って来いと伝えたが、完全にマイナス要素しかない。
こいつどんだけ印鑑押してんだよ。なんで趣味特技の欄にいっぱい押してんだよ。どこで押す練習してんだよ。そんなイイネみたいにポンポン押していいもんじゃねーんだよ。
大体経歴の欄がそもそもおかしい。なんだ。昨日の晩御飯は唐揚げですって。学歴書けよ。俺はこいつの晩御飯を把握してどうすんだよ。へー。唐揚げ美味しかった?とか聞かねえよ。コンビニの面接なめんなよ。
こんな調子で履歴書を見ても、まともな個所を見つけるのが難しい状態が続いている。やはり現時点で採用する理由が見つからない。
「どうですか??」
……バカがニヤニヤしながらこっちを見てくるが、自分では上手く書けたと思っているのだろうか。
「……とりあえず履歴書は一旦置いといて、面接をするか」
「はい。よろしくお願いします」
こうして面接が始まった。




