第206話 プリン。
どんなに優秀な人でもずっと働いていれば一度はミスをしてしまう。仕方がない。人間だもの。
ここで大事なのは、一度冷静になって何故ミスをしたのか、そのミスをフォローするためにどのように行動するかが重要だ。
――だから俺は今、目の前にある間違えて発注した新商品のプリン300個を見ても至って冷静である。
……はぁ。一体どうすりゃいいんだ。気持ち多めに10個ぐらい発注しとくかーとか思ったら、手違いで300個になってしまったんです。普段ならこんなミス絶対しないのに、きっとおじさん疲れてたんです。……はぁ。……本当にどうしよう。これ。
「はぁ……」
「……この数は流石にやばいっすね」
今日のシフトはあかっちと一緒だ。プリン300個を目の前に流石のあかっちもドン引きしている。
「ほら、どうだ??めっちゃインスタ映えするぞ??こんな数がコンビニで並んでるのなかなか見れないぞ??記念に写真撮っとけよ???」
「じゃあお言葉に甘えて撮りますね。あざっす」
「撮るのかよ」
あかっちがテンション高そうにスマホで写真を撮ってる。こいつ人のミスを突くことが楽しみで仕方ないだろ。
……でも結局これも俺のミスが原因だ。数十万の損害であかっちを楽しませられたんだから、これはこれでいいのかもしれない。……んなわけあるか。ふざけんなよ。
「ちなみにこれ賞味期限いつっすか?」
「明日の朝だ」
「うわ……マジっすか」
「そこで一つ提案がなんだが、皆の給料の一部をプリンで還元しようと思うんだがどう思う?」
「クズだと思いますね」
「……仕方ないだろ!!!こんな数売れるわけあるか!!!平日5個ぐらいしか売れねえんだぞ!!!ばーか!!!」
「俺に八つ当たりするのやめてもらっていいっすか」
ほんとぐうの音も出ない。現状何か対策を考えなければいけないのに冷静な判断ができていない。……本当どうすればいいんだ。
「すまなかった。……俺の主食はしばらく期限切れのプリンになると思うけど、今日は頑張って売ってくれ……頼んだぞ……」
「……はぁ。全く仕方ないっすね。俺が何とかしますよ」
「……何か考えでもあるのか?」
「プリン300個。俺のシフト終わるまでに完売させてやりますよ。店長は売り場綺麗にしといてください」
「……わ、わかった……」
なんでこいつ店長の俺より頼もしいんだ。




