第203話 100。
「店長さん!聞いてください!!!」
「なんだ?」
今日のシフトは上神妹と一緒だ。嬉しそうな表情をしている辺り、何かいいことでもあったのかもしれない。
「実はお兄ちゃんが馬鹿に戻ったんですよ!!!」
「そうなのか」
「え!?驚かないんですか!?」
実はあかっちから店を閉めたことに対して問い詰めた時に少し事情は聴いた。あいつが何故か店の制服を取りに来たこと。バカの記憶が戻っていたこと。全ての話を聞いて割とどうでもいいと思ったこと。
「あいつはもうアルバイトじゃないからどうでもいいよ」
「冷たっ!めちゃくちゃ冷たっ!こんな心の冷たい人初めてみました!!」
「でもお前だって柚子ちゃんとあいつが付き合ったらまずいからってクビでいいって話になったじゃん」
「いや……それは……たしかにそうなんですけど……最近のお兄ちゃんなんか元気なくて」
「……そうなのか?」
「この間も「あ!隕石だ!」って言って視線をそらしているうちに首筋をちょびっとべろべろ!ってやったんです」
「お、おう」
「でも何も反応が無くてもう一回首筋をべろんちょりん!ってやったんですけどやっぱり反応がなくて……」
「お、おう」
「と、とにかく!バイトしてた頃よりも元気が無くなっちゃったんです!」
「安定してお前が気持ち悪いことはよくわかった」
一体俺は何を聞かされているんだ。説明下手すぎだろ。
……それにしても元気ないのかあいつ。言っても完全にこっちの都合で勝手にクビにしたから罪悪感は多少なりともある。
「そこでお願いがあるんですけど……お兄ちゃんをまたアルバイトとして採用してくれませんか?」
「……でもなぁ……」
「元気だった頃のお兄ちゃんに戻ってほしいんです!面接だけでもいいですから!」
「うーん……」
「お願いします!チャンスをください!」
「…………わかった。もう一度面接してやるよ。ラストチャンスだ」
「本当ですか!?ありがとうございます!!!」
「100%不採用にするけど話ぐらいは聞いてやらないとな」
「全然チャンスじゃない!」
というわけで後日バカともう一度面接をすることになった。




