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第201話 気遣い。

「接客とは気遣いが一番大事なんだぞ」


「店長から一番かけ離れた言葉っすね」


 今日のシフトはあかっちと一緒だ。相変わらず生意気なこと言いやがる。


「言っとくけど、お前もそうだからな!」


「何向きになってんすか。俺お客さんに気を遣いまくりっすよ」


「どこがだよ。例を挙げてみろ。例を」


「いらっしゃいませーとかわざわざ言ってるでしょ」


「お前の気遣いのライン低いな、おい!」


 案の定、接客を舐め腐りきってやがる。


「じゃあ店長のいう気遣いってどんなのなんすか?」


「んー……そうだな……例えばだ。外は雨が降ってるとするだろ?お客さんが商品のビニール傘を持ってきたらどうする?」


「この人買うんだなと思ってレジしますよ」


「んな当たり前のこと聞いてねえよ!レジをした後どうするかだよ」


「あー。すぐ使われますか?とか聞いてタグ切ったりしますね」


「そう!それが気遣いだ!俺がやっててお前がやってないやつだ!」


「なんで答えたのに、やってないことになってんすか。じゃあ逆に俺も店長に質問していいっすか?」


「何だよ」


「うちの店ってフライドチキン2種類あるじゃないっすか。普通のと辛口の。もしお客さんが2種類一緒に買われた場合どうします?」


「どうもしねえよ。心の中でよっしゃ廃棄にならずに済んだぜで終わりだよ」


「2つ買うってことはもしかしたら誰かに頼まれて買ってきてる場合も想像できますよね?」


「……単純に大食いなだけだろ」


「袋が同じデザインだから、どっちに何が入ってるかお客さんはわからないっすよね?」


「……それはまあ、たしかにそうだな」


「だから俺はフライドチキンとかを袋に入れた後は、テープを貼る前に、袋を折り曲げる回数を1回か2回かに変えて、どっちに何が入ってるかをお客さんに説明してますよ」


「お前わざわざそんなことしてんのか」


「そっちのほうがお客さんもわかりやすくていいでしょ」


「……ま、まあ俺が知らないだけで多少は気遣いできるみたいだな。参考にするわ」


「普通だと思いますけどね」


「……これからは俺も超いけてるかっこいいサインを片方の袋に書くようにするわ」


「……クレームきたら絶対店長が対応してくださいね」



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