第196話 まっく。6
「インスタ映えバーガーください」
「電子レンジでチンして、しなしなになるハンバーガーしか置いてねえよ」
マック野郎が店にやってきた。少し久しぶりな気もする。
「ここの店ってインスタ映えする商品ほとんどないですよね」
「……まあたしかに全くないわな」
「そこでここの店にあったら絶対売れるハンバーガーを持ってきたんです」
「お前営業かよ」
こいつがハンバーガーを要求してくることはいつものことだが、持ってくることなんて過去に一度もない。
過去に俺に対して奇抜な物を要求してきたんだ。一体どんな大層なハンバーガーが出てくるか少し楽しみだ。
「此方です」
そういうとカバンの中から時下にはいったハンバーガーを取り出してきた。
こいつマジかよ。カバンの中ケチャップとかぐちゃぐちゃになってんじゃねえーの。カバンの奥底で謎のソースが完成してんじゃないの。
「いや……見た目は普通そうに見えるが……これがどうなんだ?」
「その通りです。普通のバンズにハンバーグとピクルスときざんだ玉ねぎが入っているハンバーガーです」
「これのどこがインスタ映えすんだよ?こんなのだったらうちでもあるっつうの」
「ポイントは次です」
マック野郎は先ほどのハンバーガーを袋に詰め、文字が書いたシールを張り付けた。
シールには『それゆけ!異世界転生オンラインバーガー』と書かれている。
「な、なんだそれ!?!?」
「そう!それが大事なんです。味なんか実際はどうでもよくて、見た目さえ変わっていればオッケーなんです!SNSに投稿すれば周りが構ってくれる商品が今求められているんです!!!」
「……なるほどな。たしかに衝動買いが多いコンビニはこういうやつのが売れるのかもな」
「でも僕はこんなの間違っていると思うんです!見た目重視のハンバーガーの人気なんて一瞬なんです!確かな味こそが固定客を生み出すんです!だから僕はここの店で本当のハンバーガーを――」
「いや、もう本当のハンバーガーとかどうでもいいからシールくれ。商品に張るから」




