第195話 ご予約。
「今日からボジョレーヌーヴォーの予約が始まったからワイン買った客には勧めていってくれ」
「わかりました」
今日のシフトは七海ちゃんと一緒だ。
「ちなみに店長さんってボジョレーヌーヴォーって何かご存知ですか?」
「メディアに踊らされて大して味もよくわからないのに客が買う飲みやすいワインだ」
「よくそんな最低な解答できましたね」
「そんなの売れりゃなんだっていいんだよ」
「お客さんに聞かれたときはどうするんです?」
「クソうめえワインっすよって勧めてる」
「……よくそんなので今までやってこれましたね」
「……あかっちはこんなゴミみたいな説明で予約とっちまうからな。……でも逆に七海ちゃんは何かわかんのかよ」
「ボジョレー地区で作られたヌーヴォー……つまり新酒のことですよ」
「……へぇー。なんか適当にかっこいい名前付けてるだけかと思ってたわ」
「ちなみにボジョレーヌーヴォーと呼ばれるのは実は赤しかないんです。その年にボジョレーで収穫されたガメイ種のブドウ……赤ワインを作るのに必要な品種と考えてください。これを100%使用したものしかボジョレヌーヴォーと名乗れないんです。つまり同時期に販売されている白はボジョレヌーヴォーではないんですよ」
「…………へぇ……めちゃくちゃ詳しいじゃん」
「私、勉強だけはできますから」
「流石だな。いやぁー七海ちゃんがうちに来てくれた本当によかったわ」
「……そんな照れることさらっと言わないでください」
「これからはお客さんに何か聞かれたら七海ちゃんをすぐ呼ぶわ」
「……私を都合のいい女扱いしないでください!」




