第189話 ななみ。15
「……目を瞑ってください」
「は、はい」
……これから何をされるんだろう。また水をぶっかけられるのではないだろうか。いや、それどころか海に突き落とされてそのまま俺が苦しむ姿を撮影したりするんじゃないだろうか。
七海ちゃんをガチで怒らせたことなんて一度もないから一体どんな仕打ちがくるのか全く予想できない。
「これから3時間ほど目を開けないでください」
「ま、まじですか」
絶対どっか連れていかれるじゃん。気が付いたら刑務所に入ってるパターンじゃん。3時間も一体何をするの???もしかしてこれは逃げたほうがいいパターンなのでは???
「ちなみに、逃げたり、目を開けた場合、殺すんで、覚悟しといてください」
「は、はい!!!」
思わず高校野球部並みに元気のいい返事をしてしまう。
……完全に俺の心を読んでやがる。目を開けた瞬間に鋭利な刃物で刺されるのではないだろうか。容易に想像することができる。……素直に怖い。
「……で、では移動しましょうか」
「あ、あの一つ質問してもよろしいでしょうか……」
「なんですか?」
「歩くのはどうすれば……?このまま歩くとゲームみたいに壁に向かってドゥンドゥン言わせながら一向に進まないという状況になってしまうと思うのですが……」
「…………」
暫く無言が続いた。
……これは気にせず歩けという意味なのだろうか?でもいくらなんでも目を開けずに前に進むというのもだいぶ無理が――。
そんなことを考えていると、俺の手に温かくて柔らかいものが触れた。……少し震えながらも徐々に包み込むように俺の手を握ぎった。
「……行こ?」
「……は、はうい!」
緊張して変な返事をしてしまった。
……一体どこに連れていかれるんだろう?




