第186話 トマト。4
近づいてみるとバカ先輩と女性警官が話をしているようだ。
何やら口論をしている様子。
「さっそく声をかけるのですよ」
「いや、待てあざらし」
「なんでですか?早く誤解を解くのですよ」
「面白そうだから逮捕されるギリギリのタイミングで声を掛けよう」
「クズなのですよ……」
知り合いが捕まるシーンなんてなかなか見れない。少し様子見しよう。
◇
「違うんですって!これはトマトなんですって!」
「さっきから同じお話をしてますけど、これがトマトなわけないじゃないですか!?これはどう見てもカラーボールの塗料です!なんでそんな堂々と嘘を付くんですか!?あなたみたいな人が平気な顔で痴漢したりするんです!あー怖っ!」
「舐めてみたら一発でわかりますよ!……うん、やっぱりトマトだ!美味しい!これは新鮮なトマトだ!」
「う、嘘です!!!……仮にそれがトマトだったとしてもいきなり投げつけられるシーンなんてまずありえないです!」
「それがあったからこうなってるんです!試しに舐めてみてくださいよ。そうすればトマトだってはっきりとわかるじゃないですか」
「な、な、舐める!?へ、変態すぎます!!別の罪を増やすつもりですか!?」
「違うんです!本当にトマトだからこんなことを言ってるんです!」
「……わかりました。そこまで真剣に仰られるなら私も覚悟しました。……あなたが本当に悪なのかどうか確認します。では……」
◇
「警官が服を舐めているのですよ……」
「……一体どういう状況なんだろうな」




