第161話 みんな。
「店長さん!温度チェック終わりました!」
「おう」
今日のシフトは上神妹と一緒だ。バカがいなくなったおかげで、致命的だった変態要素が無くなり、最近は真面目な良い子として働いてくれている。やはりマイナスの存在は早く消したほうがいいということだな。俺の判断はいつだって正しい。
「そういえば先週はありがとうございました!」
「ん?何の話だ?」
「あかっち先輩から聞きましたよ!俺は仕事しとくから皆で飯でも行ってこいって言ってたって!おかげで土曜日とっても楽しかったです!」
「…………んん?土曜日???なんかあったっけ???」
……こいつは一体何の話をしているんだ?皆で飯に行ってこいなんて言った覚えはないぞ。たしかに土曜日は皆シフトを×で出してたから一人で仕事をしていたが……どういうことだ?
「参加してないから忘れちゃったんですか?その日はお兄ちゃんの退院パーティーですよ!あかっち先輩が企画してくれたじゃないですか!」
「…………え?……ああ。退院パーティーね。パーティー。うん。あれはめっちゃ企画してたな。……うん」
なにそれ。全く知らないんですけど。その情報完全に俺に周ってきてないんですけど。伝達ミスだよね?偶然知らなかっただけだよね?ハブられてないよね???
「いやぁーあかっち先輩って意外に優しいですよね!表面的にはドライな感じなのにお店も予約して、サプライズまでわざわざ準備してくれたんです!」
「……へ、へぇー……ち、ちなみに七海ちゃんと柚子ちゃんも参加してたのか?」
「そうですよ!柚子先輩とお兄ちゃんが喋るのだけ少し不安でしたが、楽しく終わりましたよ!」
「……そ、そうか」
完全に俺ハブられてるじゃん。確かに全員参加するとシフトに入るやつが誰もいなくなるから、犠牲は必要なんだろうけどさ。それにしても一声かけてくれればいいのに。……くそ。あかっちめ。絶対に許さん。
「上神妹よ。あれだぞ?あかっちって見た目通りクズだからな?陰で人の悪口を言うのが生きがいみたいな所あるからな?」
「あかっち先輩を褒めたことに嫉妬してるんですか??ふふ。店長さんも十分優しいですよ!パーティーの時のご飯代奢って頂きありがとうございました!」
「…………へ?」
「知ってますよ!お会計の時にご飯代は店長さんからもらったってあかっち先輩が言ってましたもん!」
……この話を知らない俺が金なんか出しているわけがないだろ。恐らくあいつが自腹で払ったんだろう。……くそ。カッコつけるために俺の名前を使いやがって……。
「そうかそうか。皆の笑顔が俺にとって一番だからな。そんなお金ぐらい幾らでも払うさ」
……ここはあいつの嘘に便乗しておくことにしよう。




