第16話 まっく。2
「チキンナゲットの買取ってやってますか?」
「やっておりません」
以前、うちの店に来たマック野郎が再びやってきた。買取なんてどのファーストフード店でもやってねーよ。
「ここは販売しかやってない系ですか?」
「販売もやってない系ですね」
こいつは新手のクレーマーじゃないのだろうか。そう思ってしまう。営業妨害で警察呼ぶべきなのではないだろうか。
「じゃあとりあえずハンバーガー1つ」
「前にご用意したものでよろしいですか?」
「あ、それでお願いします」
少しでも早くこいつから解放されたかった。俺もわざわざ警察を呼びたいわけではない。問題はなるべく、スムーズに解決したいタイプの平和主義人間だ。俺は急いで頼まれた商品を取りに行った。
「はい、ではこちら1点で210円頂戴いたします」
「すいません、追加してもいいですか?」
「ど、どうぞ」
嫌な予感しかしない。
「スマイル1つ」
言ってくると思ったよ。絶対いつか言ってくると思ったよ。マックですら、嫌がられるような注文してくると思ったよ。予想通りだったよ。……はぁ。
「当店では取り扱っておりせん」
「つまり、この店にスマイルはないんですか?」
「……はい」
…………正しいことを言ったはずなのに、とんでもないミスを犯してしまった気分なのは何故だろう……。




