第X話 エイプリルフール 番外編。
「実は店長に伝えたいことがあるんすよね」
「なんだよ改まって」
4月1日。エイプリルフール。今日のシフトはあかっちと一緒だ。どうせつまらない嘘をついて俺を騙そうとしているに違いない。ふふ。騙されたふりをして逆にこいつを手玉に取ってやる。
「店長にはいつもお世話になってるんで、俺の秘密を話そうと思ったんすよ」
「ほー?秘密?」
「実は俺、最近ユーチューバーになったんすよ」
「……え?」
……実際にありそうな嘘を付きやがって。少しびっくりしてしまったが、そんなの嘘に決まっている。はははっ。馬鹿め。話を詳しく聞いてボロを出させてやる。
「一体どんな動画を投稿しているんだ?詳しく聞かせてくれよ」
「そうっすね……アイスケースの中で鍋パとか」
「ほぉー」
「カラーボールを使って店内で野球大会とか」
「それはまた斬新だなぁー」
「商品の中に爪楊枝を入れる様子を撮影したんすよ」
「へ、へぇ……」
「割と批判コメントも多いっすけど、バイトよりも稼げて良い感じなんすよ」
「そ、それはすごいなぁ……」
「この調子で再生数がもっと伸びたら、一生働かなくていいんすけどねー」
あかっちの口からすらすらと言葉が出てきて動揺する。こんなに嘘ってポンポンつけるものなのか?こいつの場合、平気な顔してやってそうだから流石に不安になってくる。
「あのさ…………嘘だよな?」
「え?何がっすか?」
「…………エイプリルフールだから嘘をついたんだよな?」
「え?何がっすか?」
「いやいやいやいや!さっきの話って全部嘘だよな???本当じゃないよな???」
「ふふ。騙されなかったっすかー。嘘っすよ。嘘」
「な、なんだよ……びっくりさせんなよ……」
「ユーチューバ―になんかなってないっすよ。そんなの投稿したらマジで捕まっちゃうじゃないっすか」
本当にこいつ無駄に演技上手いから焦るわ……。実際にそんな動画をアップしてたら、ネットで叩かれて店が潰れてしまうからな。…………ってあれ?
「お前さっき投稿したら捕まっちゃうって言ったよな?」
「言いましたよ」
「もしかして投稿していないだけで本当にやったのか……?」
「え?何がっすか?」
「いやいやいや!そういう演技はいいから!」
「えー?ちょっと何言ってるのかわかんないっすね」
「お前ふざけんなよ!!!そんな事して言いわけないだろ!!!いい加減にしろよ!!!」
「店長。嘘っすよ。嘘」
「…………へ?」
「いつもお世話になってるってところから全部嘘っすよ」
「……それすら嘘なのかよ!!」




