第147話 消える。9
「こ、告白って……その……あれだろ?実は馬鹿なんですとかそういう告白だろ?」
「も、もぉー!お兄ちゃんったらー!そんなこと自ら言うなんて……ホ、ホント馬鹿だなぁー!」
柚子ちゃんの衝撃発言に完全に空気が凍ってしまい、二人してよくわからない解釈をする。……バカが告白?いや……たしかに前に好きとか言ってたけど……展開早くないっすか。こういうのはもっとゆっくり徐々に恋愛感情みたいなのが明らかになってく感じじゃないんすか。
「いや……あの……付き合ってほしいって言われました……」
「うっ……やっぱり!」
「……おい、上神妹よ」
「ななななっ!なんですか!」
「俺は今から気分がすっきりするまで、壁に頭をぶつけようと思うから、今すぐ医者を呼んで来てくれ」
「まままっ!待ってください!!!落ち着きましょう!」
「……で、でも……す、好きな人がいるんで、告白はお断りしました……」
……さっきからこの数分で俺の感情がぐらんぐらん揺れてる。情緒不安定で俺が入院しそうなんですけど。……いや、でもよかった。バカと柚子ちゃんが付き合うなんて言い出したらほんとに閉店するところだった。こんな中途半端なタイミングで最終回になるところだった。……あれ?でも待てよ……?
「ゆ、柚子ちゃん好きな人いるの……?」
「ふぇ、ふぇー???」
「え。ちょ、ちょ!好きな人って誰!!!」
「ふ、ふぇー!!!」
これはこれでまた別の問題が発生しているんですけど!……っていうか前から思ってたけど柚子ちゃん都合のいい時にふぇーって言ってない???そんなのずるいよ?社会で通用しないよ?それなら俺も困った時にふぇーって言っちゃうよ?
「……でもでも!お兄ちゃんと柚子先輩が付き合わなくてよかったです!……あれ?でも何で柚子先輩に原因があると思ったんですか?」
「……断った後の様子が変だったから……」
……なるほど。柚子ちゃんは失恋のショックで記憶喪失になってしまったんじゃないかと思っているわけか。
「こんなことになるんだったら、私先輩と付き合ったほうがよかったんですかね……」
「いやいやいや!待て待て!そんなことはしなくていい!!!」
「そそそっそうですよ!何を言ってるんですか!柚子先輩!!」
「よし!決めた!もうあいつがバカだとかそうじゃないとかどうでもいいな!記憶が消えて色々大変だったみたいだから、バイトを辞めてもらおう!」
「そ、そうですね!機会が増えると何がどうなるかわかりませんからね!非常に残念ですがお兄ちゃんにはバイトを辞めてもらいましょう!!!」
「ふぇ、ふぇー!?」
――こうしてバカはうちの店をクビになった。
めでたしめでたし。
 




