第146話 消える。8
「あ!もしもし!柚子先輩ですか!私です!」
とりあえず電話を代わり、通話が終わるのを待つ。こういうのは意外な人物からヒントを得られたりするもんだから、もしかしたら柚子ちゃんが名案を言ってくれるかもしれない。
「そうなんですか……?それは知りませんでした……」
――通話してから10分以上経っているのにまだ終わらない。もしかしてこれは、急遽柚子ちゃんが恋愛相談をしていて、俺のことがだいちゅきなんて言ってるんじゃないか?その可能性割とあるよな?…………ないな。悲しくなってきた。
「お待ちしております!ではでは!」
通話が終わったようで上神妹が携帯を返してきた。体感時間的に15分ぐらい喋っていたんじゃないだろうか?俺も柚子ちゃんとそのぐらい会話してみたいものである。
「どうだった?俺のこと好きって言ってたか?」
「言ってないですよ!」
「……そ、そうか」
「えっとですね、柚子先輩今来るみたいです!」
「……え?」
◇
「……ふぇー……藍ちゃん、こんにちわ」
バカのことが心配だったのだろうか?通話が終わって15分程で柚子ちゃんがやってきた。今日も相変わらず可愛い。俺のことがふぇーで略されるけどそんな些細なことは気にしない。
「あの……二人に話しておきたいことがありまして……」
「どうしたんですか?」
「……もしかしたら私のせいかもしれないんです」
柚子ちゃんのせい?話を聞いてみないと分からないが、流石にそれはないだろう。柚子ちゃんって考え込むタイプに見えるし、自分のせいだと変に勘違いしているのかもしれない。
「…………記憶喪失になられた前の晩……上神先輩に告白されたんです」




