第141話 消える。3
「お兄ちゃん!!!頼まれたもの買ってきたよ!!!」
しばらくバカと雑談をしていると、上神妹が病室に入ってきた。なんだかんだで二人が絡んでいるシーンを見るのは初めてな気がする。
「おかえり。いくらだった?」
「別に気にしなくていいよ!私の奢り!」
「そっか。また今度何か奢るよ。ありがとな。藍」
「えへへっー!」
こうやって見ると不思議なもので仲のいい兄妹に見える。いいな。こういう光景。微笑ましく思える。
上神妹はレジ袋の中から新聞を出すとバカに渡した。…………新聞???
「お前……新聞なんか読むのか??」
「読みますよ?世の中で何が起こっているのか知らないと」
……何でこんな普通のことを言うんだ?新聞って何ですか?この紙、暗号がいっぱい書いてますねとか言い出しそうなやつが、なんで新聞を読むだ?…………何かがおかしい。
「……ああ!あれか!4コマを読むんだな!あれならだれでもわかりやすくて面白いからな!」
「ふふ、そんなわけないじゃないですか。僕は小学生じゃないですよ?」
「え?……いや……その……お前漢字とか読めないだろ?」
「一時的に記憶喪失になったとはいえ、流石に漢字の読み方は覚えてますよっ」
自分の発言ですら3秒で忘れるようなやつが覚えているだと!?何を言っているんだ!?
「すまん。ちょっと……確認させてくれ。1+1の答えはなんだ?」
「え……2ですけど……」
「……これは簡単すぎたか。2×3の答えはなんだ?」
「6ですよ」
「なんだと!?」
ありえない。こんな難問を解くだと……!?普段なら問題を出した時点で、日本語でお願いしますとか言ってきそうなやつが、算数の問題を解くだと……!そんなバカな……!!




