第X話 バレンタインデー 番外編。3
「どうも、こんにちは」
「……ああ。七海ちゃんか。……どうした?シフトを確認しにきたのか?」
「誰からもチョコがもらえなくて、寂しそうに前出ししている店長さんを見に来ました」
「そうかそうか。好きなだけ見ていってくれ」
柚子ちゃんが帰ってしばらくした後、七海ちゃんが店にやってきた。ひどいことを言われている気がするが、いつも通りなので気にならなくなってきた。
「あれ?……いつものツッコミがないですね。……何かありました?」
「……いや?別に何もないぞ?……はぁ」
「あからさまにテンション低いじゃないですか」
「……俺も学生の頃は義理チョコなら結構もらってたんだけどな……今となっては……」
「チョコもらえないだけでそこまでブルーになってる人初めてみました……」
「男にとっては大事なイベントなんだよ!!!」
「……そ、そうですか。あの……頑張って作ったんでよかったら食べてください」
そう言い、七海ちゃんは鞄の中から、綺麗に包装された箱を渡してきた。
「……うおわああ!!マジで!?」
「いや……その……ぎ、義理チョコですからね」
「義理でも何でも嬉しいよ!うわぁ……やったぁ……」
まさか七海ちゃんがチョコをくれるとは思ってもいなかった……。箱の中を開けると空だったり、チョコをコーティングした石とかが入っている可能性も否めないが、もう正直なんでも嬉しい。石でも何でも食うよ。
「……そ、そんなに喜ばなくてもいいのに」
「いやぁー!滅茶苦茶嬉しいよ!ありがとな」
「……そんなに食べたいなら……い、いつでも作ってあげますよ……?」
「バレンタインだけで十分だよ!あー。嬉しいなぁ……」
「……そうですか」
何故か七海ちゃんのテンションが少し低くなった気がするが、たぶん気のせいだろう。
残りの仕事は楽しく働くことができそうだ。




