第X話 バレンタインデー 番外編。
バレンタインデー。今日のシフトはあかっちと一緒だ。
……何やら女性客と話し込んでいる。……何度目だこれ。
「あ、あの……」
「どうしました?」
「あの……!チョコ作ったんで受け取ってくれませんか?」
「……ど、どうも」
「……そ、それじゃっ!」
―――何なんだこいつ。今日一日で似たような光景結構見たんですけど。なんで客からチョコもらってんの。どこの少女漫画設定だよ。うさぎ女にだけ異様に好かれてる設定なんじゃないの。ふざけんなよ。イケメン設定は俺だけで十分だろ。……あーあ。
「なあなあ」
「なんすか?」
「そんなにチョコもらって楽しいか?なあ?おい」
「なに意味わかんないこと言ってんすか」
「くそがぁ!!!!」
今日の俺は一段と荒れている気がする。あーあ。皆メディアに踊らされてんだよ。女性からチョコもらう日って何?今日一日で俺が声かけられたの近所のおばあちゃんだけだったよ?チョコもらえるのかなって一瞬期待したけど、洗剤はどこにあるかって……自分で探せよばばあ!!!
「……機嫌悪すぎてドン引きなんすけど」
「うっせえよ!!!」
「そんなにチョコがほしいんっすか?」
「めちゃめちゃほしいよ!なあ、お前いっぱいチョコもらってるだろ?一個くれよ」
「ここまで自分の感情に素直だと清々しいっすね……」
「そういうのいいから早くくれ!!」
「いや、くれた相手に失礼なんであげないっすけど……」
「くっそ!何でもいいからチョコ食いてえよ!!」
――――そんな時に、柚子ちゃんが店にやってきた。




