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第131話 ふぇー。20

 プルルルルルッ!プルルルルルッ!

 

 部屋にあった備え付けの電話から、呼び出し音が流れ出す。…………助かった。朦朧とした意識をはっきりさせ、受話器を取る。


「お時間10分前になりますが、延長されますか?」


「いや……もう大丈夫です」


 たぶん生きてきた中で、一番長く感じた1時間だった気がする。”歌う”とは一体何なのか。何度自分に問いかけただろうか。原曲を完全無視した柚子ちゃんアレンジは音楽界に革命をもたらすに違いない。そう思った。


 受付で会計を済ませ、店を出る。車に向かう途中、柚子ちゃんが鞄から財布を取り出し、カラオケ代をを俺に渡そうとしてきた。……良い子だなぁー。あかっちなんて奢られて当たり前とか思ってんのに。


「別にお金はいいよ。こういう遊びに行く機会も珍しいし」


「ふぇぇ……」


「頑張って働いてくれればそれでいいよ」


「……ふぇー!」


 柚子ちゃんは今日一番の満面の笑みで頷いてくれた。……あー可愛い。この調子でブランド物のバッグがほしいふぇーとか言われたら、余裕で買っちゃいそう。再び車に戻った俺達はドライブを再開した。相変わらず特に会話することもないので、垂れ流しのラジオを聞く。また柚子ちゃんが行きたいところ教えてくれたらいいんだけど――。そんなことを考えている最中に、俺のお腹からぐぅーっと大きな音がした。柚子ちゃんが音に気付いたのかピクッとする。あー恥ずかしい。……そういやまだ昼飯食ってなかったな……。


「柚子ちゃん、ちょっとそこのマックに寄っていい?」


「ふぇー!」


 駐車場に車を止め、皆お馴染み『マックスバーガー』にやってきた。何故かこういうジャンクフードって腹が減ってると無性に食いたくなるんだよな。


 柚子ちゃんは先に席を取ってくれるのか、空いている席にちょこんと座っていた。……俺が先に注文していいってことかな?腹も減ってるし、お言葉に甘えさせてもらおう。レジに並び、5分程度で俺の番が来た。


「いらっしゃいませ。お決まりでしたら、ご注文を……あっ」


「…………あっ」


 ――俺の目の前にはマック野郎がいた。

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