第127話 ふぇー。19
「ふぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
「……」
「ふぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
「……す、すごいロングトーンだね」
柚子ちゃん信者の俺でも、流石にこれはドン引き。採点のバーも音程を完全に無視して、一直線に伸び続けている。……なんだこれは。本当にカラオケなのか。
……いや、これは発声練習なのかもしれない。歌詞が出てない時ですら、ずっとふぇーって言ってるし。なるほどね。ふぇーって言葉は発声にも向いてるんだねってばかやろう。
「ふぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
……1曲ってこんなに長かったっけ。体感としてはもう退室してもいい時間なんだけど。……携帯で時間を確認したが、まだ入室してから5分しか経っていない。やべぇ。これが1時間続くのか。やべぇ。店員さんに笑顔で1時間でお願いしますって言った自分を殴りたい。
な、何か作戦を考えなければ。ジュースを取りに行くにしても、まだ残ってるからその手は使えない。トイレ行くって急に言っても、柚子ちゃんが察して傷つけてしまうかもしれない……。
――何もいい案が思いつかず、現実逃避に壁のシミを数えてしまう。ああ……どうすればいいいんだ。
「ふぇえええええええええええ……きっといつか♪好きだって言えるよね♪」
「……えっ」
……柚子ちゃんCメロは歌えるんだ。




