第125話 ふぇー。17
「と、とりあえず移動しよっか」
「ふぇー?」
実は今回、どこにでも行けるようにマイカーを用意してきた。公園で立ち話をするのもあれなので、停めていた駐車場に移動し、車に乗り込む。もちろん運転席には俺が座り、助手席には柚子ちゃんが座っている。
「安全のためにシートベルトはしっかりつけてね?」
「ふぇー!」
ああ……いいな。こういうの。シートベルトになりたいな……。柚子ちゃんが帰った後、こっそり匂い嗅いじゃおうかな……。
……あれ?上神妹と同レベルになってきてる気がする。
エンジンをかけ、目的地を決めずに適当に街をドライブ。こういう時に流行りのラブソングなんかを流していれば「この曲良いですよね……。私のために歌ってくれませんか?」「ぐへへ……いいよぉ」みたいな会話もできるんだろうか。いや、ふぇーしか返ってこないか。
会話がない上に、車内が無音というのはかなり寂しいものがある。とりあえずFMラジオを垂れ流しにすることにした。会話がなくてもラジオが流れていると、お互い無言でも少しは緩和される。
さてさて……これからどこに行くか……。柚子ちゃんの行きたい所なんて見当もつかない。やっぱり俺が決めたほうがいいよな……。信号待ちのタイミングを使い、必死になってカーナビと睨めっこしながら、何かないかと探す。
――その時、柚子ちゃんがじぃーっとある場所を眺めていることに気付いた。
「……柚子ちゃん。カラオケに行きたいの?」
「ふぇー!」
 




