第110話 ライン。
久しぶりの休日。
コンビニの店長なんかしてると、シフトの状況によっては1週間ずっと働きっぱなしっていうのもざらである。だから今日みたいな日はまったり布団の中で過ごしている。
あー幸せ。うー幸せ。布団がぬくぬくしててたまらんな。
――――俺が二度寝しようか迷っていると、急に携帯が震え出した。
……誰からだろう。バイトを休むとかそんな連絡ではないことを祈りたい。
◇
柚子:あかっちさんから教えてもらいました……!登録お願いします!この間はプレゼント本当にありがとうございました。
◇
ゆ、柚子ちゃんからLINEが来てる……!?しかもふぇーじゃない……!
改めてプレゼントをあげて大正解だったと感動。思わず携帯の画面保存をする。
そうか。流石にこういう通信機器を使えば、柚子ちゃんはふぇーって言わないのか。
これは人類史上最も凄い発見かもしれない。
◇
店長:喜んでもらえたみたいでこっちも嬉しいよ。
柚子:あの……店長さんの誕生日っていつですか?
店長:4月1日だよ。
柚子:エイプリールフールと同じ日ですね。笑
◇
わー!柚子ちゃんが「笑」とか使ってる!わー!テンションあがるぅ!俺の眠気もとっくに覚め、柚子ちゃんとのやりとりを楽しんでいた。
――――しかし
◇
店長:こんな日だから友達に「誕生日プレゼントやるよ。嘘だけどな」みたいなこと言われるんだよ。笑
柚子:ふぇー
店長:あれ?
柚子:ふぇー
店長:あ、あれ?
柚子:私はちゃんとプレゼントあげますよ!安心してください。笑
◇
やり取りをしているうちに気づいたが、3回に1回ぐらいの確立でふぇーって返ってくる。
なにこれ。通信妨害か何かでしょうか。携帯会社に文句言いに行けばいいのかな?
しかし、多少違和感はあるが、それでもなんとか会話ができているので、ありがたい限りである。
◇
柚子:ふぇー
店長:今度また新人の子が入ってくるから面倒みてあげてね。
柚子:ふぇー
店長:よろしくね!
柚子:あの……店長さん。
店長:どうしたの?
柚子:えっと……あの……。
◇
…………何だろう。柚子ちゃんが緊張しているのが文章からも読み取れる。何を言われるんだ?
……もしかしてバイト辞めるとか?待て待て。ネガティブになるな。ポジティブに考えるんだ。……そうだ。愛の告白かもしれない。うん、そうに違いない。自分に言い聞かせるように、緊張しながら画面を見つめる。
◇
柚子:えっと……前から言おうと思ってたんですけど……。
店長:……どうしたの?
柚子:……そろそろふぇーしたいです。
店長:……え?
◇




