第108話 たばこ。6
「ようハゲ!」
今日はたばこボーイがやってきた。この間ライターあげたんだから、もう来るなよ。
「たばこなら売らねえぞ」
「違うわ!ばーか!今日は知り合いからすげえ話を聞いたから来たんだ!」
「すげえ話?」
「でんしたばこ……?って言うのくれよ!!これなら俺でも買えるんだよな!」
こいつ……!
実は電子たばこはかなりグレーな商品である。何故かというと、この商品は法律で未成年に売ってはいけないと明確に決まってはいないのだ。そのためノンアルコール商品とは違い、ネットで年齢確認なしで購入することが可能である。
しかし……流石に売るわけにはいかない。電子たばこと言えど、未成年が使っていいもんじゃない。
「え?なにー?でんしたばこ?なにそれ?は、初めて聞いたなぁー」
「う、嘘つけ!売ってるって聞いたぞ!!!」
「いやぁーおじさんは知らないなぁー。でもたばこって名前がついてるんだから買っちゃだめなんじゃないかなぁー」
「う、嘘つけ!!!ハゲ!!!」
頑張ってとぼけて見るが、嘘が下手過ぎて完全に疑われてしまっている。
どうしたものか……。
「店長!外掃除終わりました。いやぁー。なんで浜辺ってあんなにゴミが落ちているんでしょうね!」」
たばこボーイと口論をしている最中にバカが外掃除から帰ってきた。あいつどこまで掃除しに行ってんだよ。ほんと平常運転で馬鹿だよなぁ……。ん……?馬鹿……?……これは使える!
「おい、でんしたばこって商品知ってるか?」
「なんですかそれ?初めて聞きました」
案の定、電子たばこなんて難しい単語知ってるわけがなかった。
俺が知らないと言っても嘘になってしまうが、こいつが言えば真実になる。いよいよ役に立つときが来たか。
「クソガキ。俺は事務所でやらなきゃいけないことがあるから、後はこのお兄ちゃんが対応してくれるから。じゃあな」
俺はバカとクソガキを置いて、事務所の中に入った。
あいつなら上手くやってくれるだろう……。
◇
「ねえねえ!お兄ちゃん!でんしたばこっていうの本当に知らない?それがどうしてもほしいんだ!」
小さい子供があんなに真剣に聞いてくれているんだ。頑張って考えてみよう。でんしたばこ……でんし……したばこ……うーん……たばこ……たばこ!!!僕の後ろにいっぱいあるじゃん!!!
「待って!!知ってるよ!!」
「本当!?お兄ちゃん!!」
「知ってる知ってる!いっぱいあるよ!!これでしょ?410円ね!」
 




