第107話 ナンパ。3
「あ?な、なんだよ!」
「お客さん何しているんですか?」
「お前には関係ねえだろ!」
「関係あります。ここの店長ですから」
「……こいつがミスって商品打ち間違えてんだよ!ほら!見てみろよ!」
レシートを見せつける金髪男。当事者ではないため、どの商品が打ち間違いだったか見てもわからないが……このレシートには違和感があった。
「購入された時間が深夜になってますけど……うちの店、深夜帯は女性をシフトに入れないんですよ。後……この子はそんなつまんないミスしません」
「……な、なんだよ!!!お客様に文句つけるっていうのか!?」
「何なら防犯カメラを今からチェックしましょうか。お客様のために」
「……な、何だよ……ナンパごときで向きになりやがって……」
「……変な言いがかりつけて、うちのバイトに手を出すな」
「…………く、くそ!こんな店、二度と来るか!」
俺も内心ビビッていたが、何とか金髪男を追い出すことができた。
……一旦七海ちゃんを連れ、事務所に移動する。
「大丈夫か……?」
「こ、怖かったです……」
お客さんがいる前ではずっと泣かず我慢していたのだろう。七海ちゃんの目には涙が溢れていた。普段俺と話す時は強気だが……普通の女の子なんだと実感する。……あまりこういう事をするのは慣れていないが、慰めるためにも七海ちゃんを抱き寄せ、しばらくの間優しく頭を撫でた。
「怖かったよな……」
「うん……」
「……仕事なら俺一人でも何とかなるし、今日は休んでいいぞ?」
「…………大丈夫です……」
「……無理すんなよ?」
「…………うん。……助けてくれてすっごく嬉しかったです……」
「……気にすんな。……これも店長の仕事だ」
「仕事だから助けてくれたんですか……?」
「う、うっせえよ!泣き止んだら、お客さんも待ってるし、とっとと仕事に戻るぞ」
「…………はい!」
七海ちゃんが元気になってくれたみたいで本当に良かった。




