第10話 たばこ。2
「なあなあ!たばこ売れよ!はげ!!」
「また来たな。クソガキ」
この間の小学生が再びやってきた。今日のファッションは制服にランドセル。中にはリコーダーが入っていて、少しだけはみ出している。せめて、私服でこいよ。まあ外見で騙されることは絶対にないが。
「はげ!早くマイセン売れよ!!」
「ちょっと待ってろ……あ、もしもし警察ですか」
素早い対応。こういうことは警察に任せたほうがいい。これが大人の力だ。見たか。クソガキ。
「ちょ!お前小学生相手に警察呼ぶとかまじないわ!しねよ!器ちっせ!」
「小さくねえよ!めっちゃ大きいからな!」
クソガキの暴言にムカつき電話を切る。琵琶湖よりも心が広い俺でも、流石に許せないことがある。器ちっさくなんかないし。全然ちっさくないし。マジで意味わかんないんですけど……。え、小さくないよね。
「とにかくマイセン売れよ!!今回はちゃんと策があるんだぜ!!」
「策?なんだそれ?」
「これ見ろよ!かす!」
クソガキは、財布の中から運転免許証を出し見せつけてきた。
「はい、これでオーケーだろ!!ばーか!!早く用意しろよ。はげ!」
「あのな。まず質問その1。この免許証はどうしたんだ?」
「俺のだよ!!」
「質問その2。免許証の写真と、容姿が全然違うんだが、これはどういうことだ?」
「写真写りが悪かったんだよ!!」
写真にはどう見てもおっさんが写ってる。お前こんなにハゲてねーだろ。
「質問その3。生年月日と名前言ってみろ」
「え……あ……書いてあるだろ!!文字読めねーのかよ!ばーか!!」
そりゃ覚えてないだろうな。どうせ、この免許証どっかで拾ってきたんだろ。ったく。後で交番に届けないと。
「質問は以上だ。なんか言い残したことはあるか?」
「……と、とにかくマイセン売れよ!!」
「よし、ちょっと待ってろ……あ、もしもし警察ですか」
「っちょ!!警察呼ぶなよ!はげ!!あーもう!また来るからな!!覚えてろよ!!!」
そういい、クソガキはそそささと店を出て行った。
今度うちの店に来たら、防犯カメラに写った映像を警察に持って行ってやる。
大人なめんなよ。