第97話 誕生日。4
「喜んでもらえたみたいでよかったよ」
「……どうして石が好きなことを知ってたんですか?」
「なんかね。この間天の声が聞こえてきて、石を集めろって言われたんだ」
「……そんなこともあるんですね……」
なんで俺の助言が天の声に変ってんだよ。もしかしてこいつわざと俺が言ったことを隠しているのか……?いや、記憶力の問題か。
「それじゃあ僕は帰るね。柚子ちゃんメリーハロウィン!」
「……め、めりーはろうぃんです……」
バカが帰った後、俺はプレゼントを渡すタイミングを完全に見失ってしまい、そのまま特に会話をすることもなく、柚子ちゃんのシフトが終わってしまった。石で喜ぶぐらいなんだから正直何で喜ぶか検討もつかない。あーあー……。俺も石拾っとけばよかった……。
俺は諦めて事務所で発注作業をする。何故か後ろでは、仕事が終わったはずの柚子ちゃんが事務所の椅子にちょこんと座りまったりしている。何で残っているのかわからんが……これはプレゼントを渡すチャンスか?
「ゆ、柚子ちゃん」
「ふ、ふぇ?」
「あ、あのさ……俺も誕生日プレゼント用意したんだよ」
「ふぇ……」
「ちょっと待っててね」
事務所の棚の上に隠しておいたぬいぐるみを取り出す。今更だけどこれ持って帰るの大変そうだな……。良い言葉が出てこなかったため、黙って柚子ちゃんに渡す。喜んでもらえるだろうか。
「ふぇー…………」
柚子ちゃんは黙ったままぬいぐるみを抱きしめるように両手で抱えて、顔を埋めている。この反応はどうなんだろ……。石の時はすっごく喜んでたし、もしかして微妙だった……?沈黙が俺の心をどんどん傷つけていく。
「あ、あの…………」
「……う、うん……」
「…………すっごく嬉しいです……。……大切にしますね?」
「…………あれ?ゆ、柚子ちゃん喋れるようになったの!?」
「……ふぇー……」
「あ、あれれ……?」
柚子ちゃんがぬいぐるみを嬉しそうにぬいぐるみを眺めては何度もむぎゅーってしている。
……柚子ちゃんが急に喋ったのは謎だったが……とにかく喜んでくれたみたいで良かった。




