第96話 誕生日。3
「ゆ、柚子ちゃん」
「ふぇ?」
「き、今日はいい天気だね……」
「ふぇー?」
今日のシフトは柚子ちゃんと一緒だ。……誕生日プレゼントを渡そうと思うんだが……完全にタイミングを見失っている。意識しすぎてしまっているのだろうか。……これっていつ渡すのが正解なの?
「あ、あのさ」
「ふぇ?」
「そ、そういえば柚子ちゃん今日が誕生日らしいね」
「ふぇー?」
「……あれ?柚子ちゃん誕生日だよね?」
「ふぇー?」
えっ。もしかして違う……?いやいや待て。履歴書で確認したが、今日が誕生日で合っているはずだ。柚子ちゃんが嘘の情報を書くとは思えない。これはただ単にコミュニケーションが取れていないだけだ。
「じ、実はさ、今日は柚子ちゃんのために――」
「柚子ちゃん!メリーハロウィン!!!」
俺が話を切り出そうとした時に、タイミング悪くバカが店に入ってきた。こいつ……柚子ちゃんに誕生日プレゼントを渡すためにわざわざ来たのか……!
「……あれ?上神先輩どうしたんですか?」
「柚子ちゃん!誕生日おめでとう!!」
「……覚えててくださったんですか?ありがとうございます……!」
「柚子ちゃんにプレゼントがあるんだ!」
「……本当ですか!嬉しいです……!」
「はい、これ。柚子ちゃんに似合うと思って沢山拾ってきたよ!」
俺が前に指示した通り、バカがレジ袋に大量に詰めた石を渡している。こんなの完全に嫌がらせでしかない。これであいつの好感度はだだ下がりだな。ざまあみろ。ばーか。ばーか。
「……これがプレゼントですか?」
「そうだよ!」
「……こんなにいっぱい……ありがとうございます……!私、石大好きなんです……!」
マジかよ。……マジかよ。




