初めて
ボクは、この人間の手を持った。
そして、口に当てる。
ゆっくりと、口を動かした。
「((別に、君が悪いんじゃないよ?))」
人間「……?」
形で分かったかな?
伝わったかな?
人間「…伝わったよ。だけど、このオレが…」
悔しそうに手を震える。
あぁ、人間ってものは意地悪な人間もいれば優しい人間もいるんだな。
ずっと、このままでいてほしいと
初めて思った。
人間「…立てれる?」
久しぶりだから、立てれるかな?
ダメだね。
力がでない。
「((立てれ…ない))」
口パクする。
分かったらしい。すると、すっと持ち上げた。
「!!?」
人間「よっと!すごく軽い!……」
とても、初めてが多い日だ。
こんなことされたのも初めてだ。
そして、こんな所を離れた。
人間「…そうだ!オレの名前は光幸((コウサキ))希雀((キザク))だよ!」
コウサキ キザク?
変な名前だ。
あ、そうだ…
ボクの名前ってなんだったけ?
何年も名前を呼ばれていなくて忘れてしまった。
希雀「……?名前ないの?」
ボクは横に首を振った。
そして、口を動かした。
「((忘れた。))」
希雀「う~ん(汗)じゃぁ、考えてあげるね!瞳が朱だから……朱雀!どう?オレの名前の雀を使ったんだ!」
希雀の笑顔はとても、明るかった。
とても、嬉しかった。
ボクは、縦に首を振った。
希雀「…よかった!」
ボクもつられて笑顔になる。すると
希雀「…やっと笑顔になった!嬉しい!」
そして、走っていた足を止めた。
希雀「オレが朱雀を守るから……!だから、死にたいだなんて思わないで!」
その言葉が心に突き刺さった。とても、矢のように痛い。でも、なぜか嬉しかった。染み込んでいく矢みたいに思えた。
「………」
希雀「…じゃ!逃げますかね~♪」
そして、ものすごいスピードで走っていく。人間でもこんなに早い人間がいたのか…。
希雀「~♪~♪♪」
鼻歌を歌いながらいく希雀。楽勝みたいだ。すると、ガサッと音がする。
「…?」
希雀「……ふぅ…見つかっちゃったなぁ…」
人間「おい!お前!そいつから離れろ!」
やっぱり、あいつらだった。まだ、付いてきていたらしい。
「……」
希雀「嫌だね。お前らに渡すか。」