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錬金術師の魔王討伐  作者: 水晶
~~フィンシア城 召喚編~~
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第六話 クエスト

 ギルド内は意外と綺麗にされていて、外にも負けないくらいの人で賑わっている。俺達はまず受付をしている女性へと向かい、冒険者登録と言うものをした、だが身分証明になるものが無いので渡されたナイフで指を少し切って血を一滴、同じく渡されたギルドカードに垂らす。するとカードが一瞬(まばゆ)く光り、先程登録しておいた内容が写し出された、カードの色は灰色、これはランクが上がるごとに色が変わっていき、最終的にはランクSSSで黒色に変わるらしい。


 だがランクSSSにまで達した者は、かつての魔王を倒した勇者、ただ一人。他の勇者はギルドには入らず、本来の目的である魔王を倒していった、しかしランクSSSの勇者は魔王を倒し、体力が減っている所を都市に向かって進行してきた超大型の魔物と鉢合わせ、相打ちとなり死亡した、だが相打ちとなった魔物がランクSSS級だった、そして都市に入る寸前で相打ちとなったことからランクSからSSSにまで一気に上げられ、都市を救った英雄、そして魔王を倒した勇者として、約300年経った今でも多くの人々に語り継がれている。


 受付の女性から聞いた話を思い出している内に登録作業が終わったらしく、女性が戻ってくる、今の俺達のランクは最低のF。となるとクエストはFランクの物しか受けられないかと思いきや、どうやら自分のランクの一つ上のクエストまで受けられる仕様になっているらしく、まずは少しでもGを稼ぐため一つ上のEランクのクエストを受ける事にした。


 最後に冒険者ギルドからの支給品で俺のアイテムウィンドウと同じ性能のアイテムポーチが二人分、中には体力回復、魔力回復と書かれたビン・・・・・・つまりはポーションが入っていた、次にグランアースの地図、そして一個で一回だけこの城下町へ転送してくれる、転送クリスタルが一個入っていた。ついでに女性からこれらのアイテムの説明がされた。


「エーリ、Eランクでなるべく報酬が高い奴を選んでくれ」


 女性の長ったらしい説明を終え、隣にあるクエストが張り出されているクエストボードで条件が良いものを探し始める。張り出されているクエストの内容は魔物の退治、商人の護衛、アイテム探しなどで埋め尽くされている、エーリはクエスト内容が条件の良い物は中々見つからない様で端っこの方から探しているが全く無い様だ、それにF~Dまでのクエストは大量にあり、ボードのほぼ半分以上を占めている。


「あったか? こっちは全然だ」


「こっちもありませんねぇ・・・・・・あッ! そうだ!」


 腕組みをして大きなボードを見渡していたエーリが何か閃いた様で、ボードから目を離しこちらを向く。


「納品ですよ、さっき受付の人が言ってましたよね? 納品したものは希少な物で有ればあるほど、それに見合ったGを提供するって!」


「ああ、そういや言ってたなぁ、そんじゃテキトーにクエスト受けてそこで何か採ってこようぜ? 確か納品する物は一度冒険者ギルドまで持ってくるんだったな?」


「はい、あ、盗まれないようにしなくちゃ・・・・・・」


 どうやって隠そうかと顎に手を当てて考え始めるエーリ、てゆーか別に俺のアイテムウィンドウにしまっておけばいいんだが・・・・・・俺以外取り出せねぇし、何より安全だ。黙々と思考を展開しているエーリは放っておいてクエストボードから、Eランクの魔物討伐のクエストを手に取り、受付へと持っていく。


「これを受けたいんだが」


「はい、えーっと『ゴブリン15匹の討伐』ですね? 討伐した証拠(しょうこ)としてゴブリンの身体の一部を討伐した数だけ、こちらに持ってきてください、それをこちら側で確認して、クエストの完了となります」


「分かった、それじゃ行ってくる」


 未だに思考しているエーリの頭をわしゃわしゃと撫で、覚醒させる。


「わひゃッ!?」


 いきなり頭を撫でられ顔を真っ赤に染めるエーリ、ヤカンみたいに頭からは煙がモクモクと出てきた。


「ふふ・・・・・・行ってらっしゃいませ」


 親子みたいな俺達を微笑(ほほえ)ましく思ったのだろう、少し羨ましそうに笑っている。その後も俺はエーリの頭を撫で続けた後、先程貰った俺のアイテムポーチの中身を全てアイテムウィンドウにしまい、空になったアイテムポーチもしまう。


 あの程度のポーションでは体力を十分に回復できない、と考えた俺は目的地へ向かう前に道具屋に寄ってポーションを売った、ポーション造りの材料は既に揃えているので帰ってきてからポーションを錬金術と言うスキルを使って造る、それまでは回復薬が無いのでクエストで体力が削れたらエーリに回復してもらおう。転送クリスタルは今はまだ使う予定は無いので、これは一先ず保留としよう。そうして準備を整えた俺達はクエストの目的地へ向かっていった・・・・・・。














「着きやしたぜ」


 クエスト場所に向かうため、冒険者ギルドが所有している馬車に乗り、小一時間で目的地へとたどり着いた。到着した目的地は木々が鬱蒼と生い茂る森、フィンシア王国城下町とはあまり距離が離れていないので帰りは歩いて帰る為、馬車は城下町に戻る。


 馬車が戻っていくのを見送って再度、当たりを確認する。やっぱり森は視界が悪い、ある程度知能の有る魔物の奇襲には用心しておこう、今回のゴブリンは知能はあるが単純な物しか考えられないため、多少行動を先読みして行動することが出来るとエーリが言っていた。俺達はそれぞれの武器を構え、納品できそうな物を探すと同時にゴブリンを探し始めた。


「無いな・・・・・・こりゃゴブリンのドロップにでも期待した方がいいかもな」


「どろっぷ? 何ですか? それ」


「別に知らなくてもいいぞ」


「・・・・・・気になる」


 納品出来そうな物が見つからず、ゴブリンも出てこない為こうして話をしながらのんびり探している、だが、魔物が出てこないのは少し可笑しくないか? ここにはゴブリン以外の魔物も生息しているとエーリから聞いているのだが・・・・・・。もしかしたらゴブリンは巣に集まっているのかもしれないな・・・・・・だが他の魔物はどこにいる? ・・・・・・何だか嫌な予感がする、俺の予感はよく当たるから注意しておいた方がいいか。


「あッ! マコトさん! 洞窟ですよ!」


 崖下に薄暗く中の様子がハッキリと確認できない洞窟を見つけた、すぐさま洞窟の中に入り、魔法を使って光を創って薄暗い洞窟を照らす事にした。


「ライトボール!」


 頭上に挙げた手の上に光り輝く球体が現れ、洞窟を照らしていく。


「凄いですね、無詠唱で魔法を使えるなんて、詠唱を唱えてからじゃ無いと普通の人は発動出来ないんですけど・・・・・・魔法を無詠唱で発動させる人が居ますがそういう人は稀ですよ」


 ・・・・・・そういやぁリクライさんも無詠唱で魔法発動させてたな、多分ドラゴンメテオに巻き込まれて死んだんだろうけど・・・・・・。(てのひら)の上でふよふよと眩しいくらいに光を放っているライトボールを頼りに、洞窟の中を進んでいく。洞窟は意外と奥まで続いる様だが横の広さはそうでもなかった、一人が通れても二人横に並んで通るのは無理と言った程度の幅だ。


「・・・・・・これは血の匂いか?」


「・・・・・・マコトさん! 何かいますよ!?」


 洞窟の奥までたどり着いたが突然血の匂いが辺りに(ただよ)い始め、エーリが何か発見し、洞窟の奥に“ナニカ”が積まれているのが見えた、俺はそれに近寄って正体を確認した。それは魔物だった、しかし、最早原型を留めていない程になっているのでどんな魔物かはよく分からない、エーリに見せようともこの光景は流石に(こた)えるだろう・・・・・・悲惨すぎる。


「結局何なんですかこれ?」


 何の反応も示さない俺を不思議に思ってエーリが此方にやってきた、丁度魔物のグロテスクな死体が見える位置に・・・・・・。


「何ですか・・・・・・魔物?」


 一体何をされて殺されたんだろうか? 丸っこい形の魔物で細長い尻尾があったのだろう、しかし尻尾はちぎれて白い骨が見えている、丸っこい形の身体は所々凹んでいて見る影もない、口から血が溢れ出し、足下には幾つかの目玉が転がっている。右手の半分を切断され白い骨が見える、左手は無い、恐らく肩から切られたか・・・・・・あるいはちぎられたか・・・・・・。両足は比較的軽目だ、だが両足とも変な方向に曲がっている。だが、これらは一匹の死体の様子だ、これが何十匹と無残な姿で積まれているのだから精神的に来るものがある。


「共食いか・・・・・・あるいは何者かに殺されたか・・・・・・」


 殺すにしても強い恨みなどが無ければこんな風に殺したりはしないだろう、案外、気が狂った冒険者が魔物達を見つけて殺したか・・・・・・。それよりも可笑しい点が有る、何故魔物が消えないんだ? 普通倒されたら魔物はアイテムやGを落として消えるのだろう? 


「なぁエーリ、魔物ってのは倒されたら消えるんだろう? だったら何でコイツらは消えずに残ってるんだ?」


「えっと・・・・・・魔物が消えるのは倒されてから約一時間経てば自動的に消滅します、ですがアイテムやGは約三十分で消滅してしまいます」


 という事は・・・・・・残虐(ざんぎゃく)に魔物を殺した奴はまだ近くにいる可能性がある? もしそいつが精神異常者だったら・・・・・・殺し合いに発展するだろう。


「だとすると、恐らくコイツらを殺した奴がまだ近くに居るかもしれない、気を付けろよ? 俺達に危害を加えてくる可能性が無いとは言えないからな・・・・・・」


 最悪の場合を考えて青ざめるエーリ、俺はその不安を少しでも取り除くために、少なくとも三十分は経ってるんだからどっかに行っただろうさ、と付け足す。エーリはその言葉を聞いて少しは安心出来た様だ、さて、ここに長いしてもゴブリンは居ないみたいなのでさっさと他の場所を探す事にしよう。このキツイ匂いにも少し慣れたようで顔色が元に戻っている、てゆーかもう慣れたのかよ、随分と早いなぁ・・・・・・俺も慣れたけどさ・・・・・・。


「ここには死体以外何も無いみたいだから外に出て、ゴブリン見つけてさっさと討伐しようぜ? 今日は寝てなくてな・・・・・・絶対宿屋に帰ったら寝る」


「ははは・・・・・・そうですね」


 俺達はライトボールの光を頼りに洞窟を脱出した。














 洞窟から出て、しばらく複雑で迷路の様な森を彷徨(うろつ)いていると運良くゴブリンの群れに遭遇した。咄嗟(とっさ)に茂みに隠れて様子を伺い、通り過ぎた所をスキだらけの背後を魔法での奇襲を仕掛けた。唱えた魔法は広範囲に高いダメージを与えるサンダーボルト。何匹か当たらなかった奴らは茂みから出て直接討伐する、今回はエンチャントを掛ける必要が無いのでエーリも短剣を振り回し、ゴブリンを討伐していく。エーリは魔物を狩った経験があると言っていたがそれは本当らしく、次々と短剣を振るいゴブリンを絶命させていく。


 討伐を開始してから約数十分、目標15匹目のゴブリンを討伐し、武器をそれぞれの鞘の収め、ドロップした『ゴブリンの棍棒』をアイテムウィンドウにしまう、エーリは突然消えたアイテムを魔法か何かでしまったのだろうと思い、何も言わなかった。大半のドロップアイテムは俺のアイテムウィンドウにしまい、少量をエーリのアイテムポーチにしまった。結局、ドロップした物でも納品アイテムは出なかった、なので諦めてさっさと城下町へ戻ろうと、馬車のおっちゃんに教えてもらった森の城下町へ戻るルートを辿ってしばらくの間歩き続けていた時だった。


 城下町へ戻る一本道にふと、視界に留まる物が有ったので気になって見てみると・・・・・・狭い森の道のド真ん中に一つの、肉片と洞窟の魔物達と同じ死体が紅い血を撒き散らし、緑の草の上を紅いカーペットへと変えていた。


「これは・・・・・・恐らくCランク級の魔物、シルバーウルフですね」


 グロテスクな死体に慣れたのか、淡々(たんたん)と言葉を(つむ)ぐ。


「強いのか? そいつ」


「ええ、Cランクともなると、群れを作ったりすると王国の騎士団が討伐に向かう程ですね」


 そいつが殺されているとなると・・・・・・殺した奴はCランクよりは上なのか・・・・・・Cランクの魔物を肉片になるまで殺る奴だ、恐らくBランクは超えていると見ていいだろう。


「マコトさん・・・・・・シルバーウルフのアイテムが落ちていますよ・・・・・・!」


 エーリの言葉に反応し、即座に肉片と化したシルバーウルフを見てみると、直ぐ近くにGと何かは分からないがアイテムが落ちていた。これがもし冒険者が捨てた物では無いとすれば・・・・・・ドロップアイテム、それは三十分経ってしまえば消える魔物が落としたアイテム。となると・・・・・・直ぐ近くに居る・・・・・・!?


「エーリ、構えてろ」


「き、気を付けましょう、Cランクの魔物を倒すほどですから・・・・・・」


 魔剣を鞘から抜き、構えてから十秒が経ったその時・・・・・・!茂みから出てきたのは・・・・・・馬鹿デカイ身体の“化け物”それを見た瞬間、エーリが腰を抜かしてへなへなと地面に座り込んでしまう。鋭く巨大な爪、黒い体毛、鋭く長い歯、紅い目、そして・・・・・・口からはみ出ている紅い血が滴る肉。そいつは俺達よりも肉片と化している魔物を視界に捉えた。そして肉片に近づき・・・・・・殴り始める、腕は太く黒い体毛に(おお)われている。


 やはり洞窟の魔物達を殺したのはアイツか・・・・・・そうか、アイツが魔物を殺しているからあんなに魔物が少なかったのか・・・・・・。何度か殴った後、興味が無くなったかのようにその場にどすっと言う音を立てて豪快に座り込む。


「SSランク級・・・・・・ダークベアー・・・・・・何でこんな所に・・・・・・?」


 地面に腰を抜かして座り込んでいるエーリが小さな声で、そう呟いた・・・・・・。俺は自分の耳を疑った、何故そんな魔物が自分達の目の前に居るのだろう? SSランク級の魔物何て倒せるのか? いや、倒せないだろう、俺は経験が少ないのに戦った所で殺されるのがオチだ。


「殺される・・・・・・! 嫌だ、死にたくない・・・・・・! 逃げないと・・・・・・!」


「エーリ待て! 一人じゃ危険だ!」


 逃げ出すエーリを呼び止めるため大声を挙げてしまった、エーリの腕は掴んだが・・・・・・様子が可笑しい、俺の後ろ見て酷く怯えている、心の中で恐怖心が暴れだすがそれを無理矢理捩じ伏せて大人しくさせる。そして俺は振り向き・・・・・・絶望的な光景に唖然(あぜん)となり、言葉が出なかった。俺の声に反応した魔物が黒い体毛の巨体を揺らし、紅い目を光らせ、低く唸りながら四足歩行で此方に迫ってきているのだから・・・・・・。


 懐に忍ばせているホルスターから魔銃を抜き、エーリの腕を掴んでいる手を離し腰につけている鞘から魔剣を抜き放つ。こんな所で死んでたまるか・・・・・・せめて瀕死まで追い込められればそれで十分だ。俺に敵意が有ると感じたのか魔物は口から出ている肉を飲み込み、大きな咆哮(ほうこう)を挙げ、木々を超える巨体を揺らし、突っ込んできた。ーーグオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!ーー

 誤字脱字がありましたら報告よろしくです。

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