第一話 異世界の城
誤字脱字が有れば報告お願いします。
「勇者様! 魔王を倒してください!」
随分と唐突だな、挨拶の一言も無しかい。
さて、あの後神様に異世界に転生する形でここに送られた訳だが、いきなり目の前に可愛い巫女服を着 た女の子とご対面とは・・・・・・許せるっ!
「俺は確かに勇者だ、魔王だって倒してやんよ、だがな、まずはこの世界について知りたい、そこで だ、巫女さんよちーっとこの世界について話しちゃくれないかい?」
まぁ、正直どうでも良いんだけどね?
「はい! 最初にこの世界はグランアースと言います、次に今私達が居るのはフローリック大陸のフィ ンシア王国です」
「へぇ、それじゃ次は魔王について教えてくれ」
巫女さんは超絶天使笑顔で魔王について説明してくれた、はぁ~お持ち帰りしてぇ~。
「魔王は何千年も昔から居て、魔王が現れるその度に勇者が魔王を倒して平和が訪れました、しかし、 最初はまだ良かったのですが・・・・・・その内魔王が力を増す様になってきて、もうこの世界で勇者 を募っても返り討ちにあって、何千人の魔法使い達が封印するまで勇者は倒され続けましたーー」
ふーん、最初から勇者召喚してた訳じゃないのか、てっきり最初から勇者に任せっぱなし
だったのかと思ってたよ。
「ーーそして、人々は異世界から勇者を召喚し魔王を倒すことにしました、この世界の勇者ではなく別 の世界の勇者なら、魔王を倒してくれるのでは? と、そう考えた人々は勇者を召喚する魔方陣を創り ました、そして・・・・・・」
「俺が召喚された・・・・・・と」
「はい、異世界から召喚した勇者達はどれも光属性を持つ逸材でした、魔王は光属性に弱いため、で勇者を召喚し続けてからまだ一回も、負けておりません、どの勇者も普通は何年も掛かる魔法をたっ た一ヶ月の修業期間の中で習得していましたーー」
これはもうチートの域だな、勇者は。
「ーーしかし、そんな勇者の力に慢心してしまった人間は・・・・・・武器を捨て、気ままに暮らすよ うになったのです、そこに、再び蘇った魔王が魔物の軍勢を率いて魔王の復活を世に知らしめると同時 に幾つかの王国や村を滅ぼしていきました、そこで、事態を重く見た人々は冒険者ギルドを創り、魔物 に対抗する様になりました、しかし魔物は数を増して行くばかり、恐らく魔王が蘇ったのが原因だと考 えたフィンシア王国の王、グリード・フィンシア王は勇者を召喚し、魔王を倒す事にしました」
成程、ならその期待に応えるため、魔王を必ずや八つ裂きにしてやろう。
「さて、説明が終わった所でフィンシア王に会いに行きましょう」
「あ、ちょっと待ってくれ」
俺の手を引っ張って行こうとする巫女さんを呼び止める、ただ少しやることを思い出したのでな、まず はそれをやってから行こう。
ーーステータスONーー
頭の中でそう念じると目の前に青色のステータス画面が現れた。職業の欄には“錬金術師”そしてその一つ上には“LV200”その他には最早チートの域に達したステータスがズラリと並んでいる、そのステータスを一つ一つじっくりと見ていると。
「勇者様? 何をしているんですか?」
「ん? ああ、何でもない、少し考え事をしていてな・・・・・・さ、行こう」
ーーステータスOFFーー
どうやらステータスは俺以外には見られないみたいだな。さて、一応錬金術師の説明をしておこう、錬金術師はデメリットはあるがその代わりメリットもある。まずデメリットから、錬金術師は必要な経験値が他の職業より高い、これが原因で錬金術師に転職する人が減った、まぁ、普通はそうだろうな。次に転職出来る確率だろう、錬金術師は不定期に所々を点々と移動するNPKに接触して、転職クエストを受ける必要があるが、内容はポーションを500個造って専用の武器でボスモンスターを連続で狩る、終わったとしても次はNPKを探し出さないといけないという最早鬼畜なこの内容をクリア出来たものが錬金術師へと転職できる。
次にメリット、回復や支援に攻撃、どんな魔法だって習得できる、どの魔法も効果が大きい、錬金術師のみが召喚できるホムンクルスなど、PTでしか倒せないモンスターも倒すことが出来るほど錬金術師は強い。そして、何といってもMPの量だろう、上級魔法だって連発することが出来る程だ、今は白衣の効果で消費MPが三分の一になっているのでかなりの数の上級魔法が連発出来る。
「勇者様、私に着いてきてください」
「オーケー、案内は任せた」
俺は巫女さんに案内され、フィンシア王の居る所までついて行った。
「ひぇ~、随分と城の装飾に金が掛かっているみたいだな」
長い廊下に飾られている騎士の鎧や、壁に掛かっている名画まで・・・・・・どれも金が掛かっている としか思えない、さっきの兵士の鎧何て銀ピカだったぞ?
「はい、フィンシア王は光っている物が好きな様ですから・・・・・・」
そう言っている巫女さんの顔は少し曇っていた、フィンシア王に何かされたのだろうか?・・・・・・もし、もし仮にだがメイドさん達に八つ当たりする様な、ゴミみたいな性格のダメ人間だったら俺は、この城から巫女さんを連れて、どっか行って遊び尽くして、最終的には魔王を討伐なんか最後の最後に後回しだこの野郎! やりたい事やるまで魔王討伐なんてしねーぞ!
「あ、ここです」
考え事をしていたら何時の間にか着いていたようだ、さて、いよいよフィンシア王とご対面な訳だが、
嫌な野郎だったらトコトン弄り回してやる・・・・・・ふひひ。
「フィンシア王! 勇者様をお連れして参りました!」
俺から変な気を感じたようで少し顔が少々引きつってたが、直ぐに元に戻してフィンシア王に扉越から 呼びかけた。
「うむ、入れ」
・・・・・・喋り方が最早王族だよ、こりゃ期待はしないで置こう・・・・・・。
「失礼します・・・・・・」
巫女さんがゆっくりと扉を開ける、その先には右と左で一列ずつ並んでいる兵士達、銀に光っているその鎧はキラリと眩く光を反射している。俺は顔を上げて玉座にふてぶてしく座っているフィンシア王を少し、ほんの少しだけ、殺気を込めた眼で睨んだ、それは誰にも気づかれる事は無かった・・・・・・。
「フィンシア王、こちらが今回の勇者様です」
「ふむ、勇者殿、名を聞かせてはくれまいか?」
玉座の前に片膝を付き、フィンシア王の問いに答えた。
「私は岸辺 誠、いえ、マコト・キシベの方がよろしいでしょうか?日本人で学 生をやっています、年は十八歳、先程この世界に召喚されました」
「そうか、我の事はシンシラから聞いているだろう? ならば早速主に勇者としてこの城で一ヶ月修行 してもらう、後で勇者殿には武器を選んで頂く」
シンシラ、というのは、この巫女さんの名前だろうか?
「承知しました、では私はこれにて・・・・・・」
立ち上がった瞬間睨みつけておく、それもまた、誰も気づかないまま・・・・・・。扉が静かに閉まる、巫女さん、もといシンシラさんに俺の部屋まで案内を頼もうとした時、シンシラさんがこちらをジッと見つめてから、こう言った。
「何で、フィンシア王をあんなに睨むんですか?」
気づかれてたか・・・・・・まぁいいや、どっち道シンシラさんには話しておこうと思ってたからな、丁度良いから今の内に話をしておこう・・・・・・。
「・・・・・・理由は簡単だ、ただ気に入らなかった、それだけだ」
俺とシンシラさんしか居ない廊下、俺は説明する代わりに俺の部屋へ案内してくれ、と言う条件で説明をしている。
「・・・・・・それだけじゃ無いんでしょう?」
「ハッ・・・・・・そうだよ、俺は一瞬アイツと目があっただけで分かった、コイツは人を道具扱いす るような、腐った人間だってな」
巡回中の兵士に聞かれたら即刻、死刑にされそうな事を平気で言っているが、兵士がいる様子は無いので大丈夫だろう。
「そうですか・・・・・・」
シンシラさんはそれ以上、追求はしてこなかった。
お互い沈黙し合っていた、この沈黙に耐え切れなくなった俺はシンシラさんから何か聞こうとして言い出そうとした時、シンシラさんが口を開けて言った。
「ここが勇者様の部屋になります」
俺は扉を開けて中を確認する、一人で生活するのには十分な広さだな、お、ベット発見!
「勇者様・・・・・・」
「マコト・キシベ、マコトで良いぞ」
「・・・・・・はい、マコト・・・・・・様」
様は別に要らないんだけどな~、いいか別に。
「では、私の事はシンシラ・リース、シンシラと呼んでください」
「分かった、シンシラ、これでいいか?」
するとシンシラは満足したようで笑顔で喜んでいた、てか笑顔マジパネェ。
「今日はもう寝る、テキトーに起こしてくれ」
「はい! マコト様!」
タッタッタとシンシラは小走りで扉へと向かっていった、あ、転んだ。
「いてて・・・・・・はっ!? しっ、失礼します!」
慌てて立ち上がり扉を閉める、ふむ、白か、いいもん見れたなぁ~。ニヤニヤしながらベットへ飛び込む、ベットは思っていたよりも柔らかく、弾力が有りポヨンポヨンと弾む、さて、寝るか・・・・・・明日武器がどうとかって言ってたしな。考えるのは後にして、今は寝ることにした、明日は城の中を散策できると思うしな、まぁ、もし迷ったらそれはそれでいいか・・・・・・偶然部屋を見つけるかもしれないしな。俺は枕をして、首まで薄い布団をかけて深い眠りについた・・・・・・。
「さて、行きますかね?」
先程目が覚めた俺は胸に手紙が置いてあるのを見て、読んでみるとそれはあの神様からの手紙らしく、 一つプレゼントを忘れたので送るらしい、手紙は読み終わった時に消え、その時プレゼントが届くらしい。そして読み終わって届いたのはホルスターだった、それを腰につけて魔銃を入れる、恐らく前から見れば白衣からチラついているだろう、別に白衣のポケットに入れれば良かったのだが何となく、いや半分くらいノリでやった。
白衣のシワを整えて部屋を出る、さて、さっきシンシラから聞いた話では武器庫に行けば良い、と言われたが聞こうにもそのまま何処かへ行ってしまったので、探すとしても正直なトコ面倒だ。
「武器庫、ね・・・・・・気楽に探すかな」
取り合えず俺は城を一通り巡ってみる事にした、そうすれば城の中も大体は把握できるし運が良ければそのまま武器庫に着く可能性がある。俺はそう考え、廊下を歩いていった・・・・・・。
「着いちゃったよ!」
あっれー? 案外簡単に着きましたが? 武器庫の前で立っているのも何なので一応着いた事だし、入ってみる事にする、扉は所々錆びれていて古めかしい様子が伝わってくる。取っ手を掴んで扉を開ける、武器庫の中は意外と明かった、奥にはシンシラが待っていた。
「よう、シンシラ」
「あ、マコト様、お待ちしていました」
ペコリと頭を下げるシンシラ。
「確か武器を選ぶんだったよな? 早く終わらせようぜ」
「はい、マコト様にピッタリな武器が見つかるといいですね!」
そうして俺は武器を選び始めるが、武器庫の名は伊達じゃないな、大量に武器が置かれている、この中から探すのか? はぁ、チマチマやっていくか・・・・・・。見渡す限り武器、武器の大半は錆びてはおらず未だに自らの輝きを放っている、どうやら手入れはされているようだな・・・・・・。
「よっこらせっと・・・・・・」
まずは邪魔な物を退かす、こう言うのって大抵は奥とかにレアモンが眠ってるようなモンだ、俺はそい
つを頂こうかね・・・・・・。
「・・・・・・ん? コイツは・・・・・・」
大剣の裏に隠れていた武器を発見する、それに手を伸ばして掴み取る。それは剣だった、それも禍々しい気配を感じさせる、鞘は黒い、いやドス黒かった、刀身を鞘から抜いてみると・・・・・・今度は剣は紅かった、紅蓮の炎の様に・・・・・・。
「へぇ・・・・・・気に入ったぜ、コイツにする」
刀身を鞘の中に収めて、シンシラに言った
「黒い剣? マコト様が選んだのならそれでよろしいのですが・・・・・・」
この剣なら仕方ねぇか、鞘は黒いし剣は紅い、これが呪いの武器でも仕方ないよな・・・・・・まっ、呪いが掛かったところで協会にでも行って呪いを解いてもらえば済む話だ。
「俺は一旦部屋に戻るが・・・・・・何かしなくちゃならない事はあるか?」
「マコト様はお昼過ぎからフィンシア兵団の隊長と模擬試合を行います、その後は特に予定は無いです ね、今の所はですけどね・・・・・・」
さて、一旦部屋に戻るのは事実だが、俺にはやることが有るんでな、見つからない様にしないとな、バレたら勇者であろうとも何されるか分からねぇからな・・・・・・。
「そうか・・・・・・」
俺は一言だけ返してそそくさと早足気味に武器庫から出た、俺の背中をシンシラはただ無言で背中を見つめてた何かを訴えるような視線で、その視線に俺は気がつかなかった。