第十四話 武闘大会開始
この更新ペースを何とか維持していきたいなぁ~
朝、目が覚めた俺達は一度宿のロビーに集まり、テーブルの椅子にそれぞれ座りながら話をしていた。
「そう言えば英介、武器は何を使うんだ?」
何も持っていない所を見ると素手か? いやナイフを隠し持っているのかもしれない。確かギャンブラーは攻撃力では無く運のステータスの高さで攻撃力を決めるから、攻撃力がプラスされる装備より運がプラスされる装備の方が良いらしい。
今着ているバーテン服も多分そういう効果があるのだろう、いいよなギャンブラーって。運が高いからカジノで荒稼ぎ出来るし、高い装備が有ってもカジノで稼げば直ぐにでも大金持ちになれる。おまけに運が高いからよくクリティカルが発生するから、手強い魔物でもクリティカルが連発して発生すればあっさり勝てる可能性もある。
「それなんだが・・・・・・ジャジャーン! 武士の象徴、日本刀!」
アイテムウィンドウを開いて黒い鞘に収められた刀を取り出す。そうか、俺達にはアイテムウィンドウがあるから武器を大量にしまえるのか。それにどうやら俺達はお互いのステータスウィンドウやアイテムウィンドウを見られるのか、他の人には見えないみたいだが。
「マコトさんと同じで何処から出したんでしょう? やっぱり魔法の類でしょうか?」
「まぁ・・・・・・そんなモンだ。てゆーか英介よ、それどっから手に入れた?」
今まで何人か冒険者らしき奴らを見てきたが、刀を持った奴らは見なかった。だとすると可能性としては
英介が自分で造ったか、英介が製造方法を誰かに教えて造らせたか、実はこの世界でも造られているが高価な為使う人が少ない、多分これのどれかだろう、他にもあるかも知れんが。
「これはね、偶々ネットで作り方を興味本位で見ていたのをね、もしかしたらグランアースじゃ造られていないのか? と冒険者達の装備を見て思ったんで、知り合いの鍛冶屋に製造方法を伝えて造ってもらったんだ。質の良い材料とGも渡した、中々に性能の良いものを造ってくれたみたいだね」
「へぇー、よく製造方法なんて覚えてたな?」
「こう見えても武器とかって好きなんだ、ナイフとか拳銃とかね。勿論それは現代であろうが戦国時代の武器であろうがね。そんな訳で武士の象徴、刀を調べているときに製造方法が書かれたサイトを偶然見つけてね、まぁ何故か今の今まで忘れずに覚えてたんだよ」
英介は勉強に関する事はまったく覚えないくせに、趣味の事となると人一倍に物事を脳に吸収できる。ホント記憶力だけは良いんだがな、前なんかRPGやってる時フィールドに出てくるモンスターの名前に使ってくる魔法、ドロップするアイテムまで把握してやがった、あの時はたまげたもんだ。てゆーかそれを勉強に回せば良いものを・・・・・・もったいねぇなぁ。
「さいと・・・・・・?」
「あー。俺達の故郷にある・・・・・・情報が書かれた看板のような物だ」
エーリが聞き慣れない単語を聞いて首を傾げる。そうか、この世界に日本と言う国が無いから、こっちの『パソコン』や『携帯電話』に『自動車』何て言っても説明しなきゃ伝わら・・・・・・いや、まずこの世界の科学の発展が遅いから概念そのものが理解できないか・・・・・・。うーん、何だか外国人と喋ってるみたいだな、いや正確には異世界人と喋ってるんだけども。
「便利な看板さ、いろんな情報が書かれているんだ。で、その看板を見て、造り方を教え、この刀を造ってもらったんだ。名前は・・・・・・そういや付けてもらって無かったな・・・・・・と言うか僕にこれは扱えないな、剣道なんてやってことないし、修学旅行で記念に買った木刀を使ってチャンバラごっごした程度だよ」
そう言って刀をまじまじと見つめる。・・・・・・どんな効果があるのか、見させてもらうか。俺はチェックを発動し、刀の情報をデータ化して頭の中にウィンドウとして出現させる。装備名は『刀(名無し)』と表示されている、これを見る限り名前を付けられるのだろう。
次に攻撃力を見る、・・・・・・攻撃力580。固有能力『一騎当千』 待てよ? 確かまだ魔剣をチェックしていなかったな。俺は腰に付けている魔剣にチェックを唱えた。すると二つ目のウィンドウが脳内に表示される。名称『暗黒の剣』攻撃力450。固有能力『チェックメイト』
・・・・・・おい、これ魔王の剣じゃなかったのか? 何だこれ? つまり日本の生み出した刀が魔王の剣より勝るとでも?
さて、一つ説明しておこう。まずこの“固有能力”についてだ。固有能力は限られた武器にのみ、それぞれ違う効果の能力が宿る。例えば剣を天に向けると落雷が落ちてきて敵を攻撃する、振るうと敵に無数の衝撃波を繰り出す、とまぁこんなもんだろう。まぁ魔法とスキルが合わさった、とでも思えばいい。
ちなみにその攻撃はMPを消費しない。だが強力な固有能力ほど使用できる回数が少ない、あんまりボコスカ使いまくっていると直ぐに使用不能となる、注意が必要だ。なお、使用回数を回復させるにはある程度の時間が必要になる。これは逆に強い固有能力ほど回復する時間が短い、そして弱い固有能力になると回復時間は長くなる。
強力な固有能力はあまり連発は出来ないが、使用回数の回復が早い。弱い固有能力はある程度の連発が可能、だが使用回数の回復が遅い。
さて、どうしようか? 攻撃力は魔王の剣より刀の方が強い、固有能力も刀の方が名前からして強そうだ。・・・・・・確かチェックは魔法使い系の初級魔法だったはずだからギャンブラーは・・・・・・、戦士系か? だとするとチェックは使えないから装備の性能は分からない。
ゲームでは装備の性能を調べるアイテムがあったが、この世界にそういう類の物は恐らく無いだろう。だから英介は刀の性能が俺が持っている魔王の剣の性能が分からない、これは好都合だ。
「なら英介、この魔王の剣とその刀、交換しようぜ?」
「え? 魔王の剣?」
「そうか、エーリは知らなかったな。フィンシア城の武器庫に有ったから持ってきたんだよ」
何で有ったんだろうな? 普通あんな所には置いていないだろう、あの時はあまり気にはしなかったが・・・・・・今思うと本当に何故フィンシア城に? まぁ魔法とかがある世界だから普通では有り得ない事も起きるんだろう。
「城の武器庫に置いてある物なんでしょうか?」
「何でだろうな? 俺には分からん」
「なぁなぁそれホントか!? これと交換してくれんの!?」
明らかにこの剣を欲しがってる様子で会話に割り込んでくる。てゆーか誰も魔王の剣が刀に性能負けしてるって気付かねぇよなぁ・・・・・・。まぁ、今回はそれを利用させて貰うんだがな。此方は魔王の剣が刀よりも強い事を知っている、だが英介はそれを知らない。見た目と名前だけで判断している。
それを利用して交換する。英介は弱い剣を嬉々として受け取り、強い剣をスンナリ此方に渡してくれる。まぁ、130程度の違いなんだが・・・・・・だが、勝てなかった敵に勝つためにコツコツと金を貯めて、装備を整えて見たらアッサリと勝ててしまった、というのはよくある話だ。
「ああ。ほら」
「やっほーい! 魔王の剣だ!」
という訳で早速交換したんだが、英介が凄い喜んでる。あ~、魔王の剣が刀より弱いって知ったらどんな顔するんだろうなぁ・・・・・・。この交換は実際にはこっちが得してあっちが損してるよなぁ・・・・・・、まぁいいか、英介だし。
「剣なら別にただ振り回すだけでもいいが、刀はそうは行かない。ちゃんとしたやり方ってもんがある。俺はちょこっと趣味程度に剣道やってたから、そこそこは出来るぞ? 一番得意なのは射撃何だがな」
「そう言えば誠って祭りに行くと、真っ先に射的しに行くよね? もう何ていうか「狙った獲物は逃さない」って感じで次々に的に当てていくよね~」
「あの瞬間は俺の射的本能が目覚めるんだよ」
的に全て弾を当てた御陰で店のおっちゃんが涙目になっていたのは余談だ。まぁ取りすぎて帰りに大変だんだがな・・・・・・。
「マコトさん、そろそろ・・・・・・」
「ん? ああ、じゃあ行こうか?」
刀をベルトに取り付け、ステータスウィンドウを開く。最近になって気がついたんだが、どうやらステータスウィンドウで時間を確認できるみたいだ。所持金も表示されているみたいなので、結構便利だ。
テーブルの上にあるコーヒーの残りをぐいっと飲み干してから立ち上がる。時間には少し余裕があったので、俺達はゆっくりと武闘大会の会場へ向かう事にした。
武闘大会会場内。実はここ、元々は王国の兵士達の腕試しの場らしく、毎年この時期が来ると巡回兵士を増やし、一般の客にも開放している。この中で問題を起こそうとすれば、直ぐにでも巡回中の兵士達が飛んでくる。
で、今俺達はその会場内に居る。エーリは出場しないので観客席の方に行っている、そして俺と英介は出場選手が休憩する控え室に居る。控え室はチームごとらしく部屋の中に居るのは俺達二人だけだ。
「ソロで出場している選手は大変だね、初っ端からバトルロワイヤルだってさ」
「ああ。勝ち残った奴らが二回戦に出場できるんだろう? こっちは何だったかな・・・・・・、ああそうだ、相手一チームとバトルして勝ったほうが二回戦進出・・・・・・って書いてある」
参加する選手全員に配布されるパンフレットを流し読みながら答えた。優勝賞品はシャドーに教えてもらった通り、100万Gと聖剣、それに優勝者にはもれなく王宮の兵士として仕える事ができる、と書いてある。その横に括弧で『王宮の兵士として仕えるならば、それなりの地位は与えられる』と書かれていた。
恐らくこれが目当てでこの大会に出場する人間も山程居るんだろう。主催者側としては参加人数が多くなって、より盛り上がる事が期待できるだろう。なお、参加料金は無料だったので、誰でも気軽に参加出来る。そのため、腕試しとして参加する者や王宮の兵士となって地位を得るために参加している物が大半を占めているだろう。
「なら、このソロ一回戦が終わってから、次のタッグ一回戦が始まるんだね。いやぁ~、正直僕と誠ならどんな相手だって楽勝だと思うよ?」
「って言われてもな、こっちは結構苦戦してるんだぞ? 王宮随一の剣士と戦ったり、SSランクの魔物を数匹同時に対峙したり・・・・・・」
「誠は魔法使い系なんだから戦士系と相性が悪いのは当たり前だって、 錬金術師は魔法が豊富なんだから、回復とか支援とかもこなせるでしょ?」
「いや、俺の場合は剣と魔法をどっちも使ってるからさ・・・・・・」
「・・・・・・そう言えばさ、その拳銃どうしたの?」
英介が俺の懐を指さしながら聞いてくる、何時の間に気がついてたんだ?
「これか? 貰ったんだよ、神様にな」
「ふーん、そっか。だとしたら余計に近接武器の意味は?」
「片手に拳銃、もう片手に刀。これで行く。魔法は・・・・・・いざとなったら拳銃の銃口から発射するさ、出来ない魔法は・・・・・・どうするかな」
はぁ、と英介が溜め息を吐く。
「・・・・・・もうさ、売っちゃえば? その拳銃。結構高値で売れると思うよ?」
「・・・・・・考えとく」
スマン神様。貰っといて何なんだが売るかもしれないわ・・・・・・。実を言うと、魔銃より刀のほうが個人的には好きなんだよ・・・・・・。
今後に魔銃はどうしようかって考え始めた時だった。掌に握り締めていたクリスタルから、アナウンスが流れ出した。このクリスタルを分かりやすく言えば携帯電話の様になっている。
『まもなく、第一回戦ソロバトルが終了します。第一回戦タッグバトルの方々は選手出場口付近へ集まってください』
もう一度内容が繰り返され、それが終わると同時に薄く紫色に光っていたクリスタルが発光を止める。何となく緊張してきたが、気になる程ではない。
「いよいよだな・・・・・・」
「だね・・・・・・、んじゃ。僕らの力って奴をタップリと見せてあげようかね?」
それぞれ椅子から静かに立ち、控え室を出て迷うことなく選手出場口へと向かった。しかし、闇は刻一刻と、着実に迫りつつあった・・・・・・。
矛盾、誤字脱字などが有りましたら報告よろしくです。