第十三話 俺と英介
おお~、中々に早く更新できた。やっぱり他の事やってると遅くなるなぁ。
「すまないねぇ。料金は払い戻すから、他の宿を当たってくれんかね?」
「・・・・・・他に空いてる部屋はないのか?」
宿屋に戻った俺達は、部屋に戻ろうと受付のカウンターを通り越した時、この宿の亭主であるおばさんに呼び止められた。話によると、どうやら俺達の借りた二つの部屋の内、エーリの部屋だけ他の人物に借りられてしまった、という訳だ。
どうもこの世界は野良の旅人よりも町の住民の方が優先されるらしい、といっても。歴戦の剣豪だとか、被害を未然に防ぎ住民を守った者、ランクが高い冒険者みたいな奴らは住民より優先される。さらにそれよりも優先されるのは、兎に角金を注ぎ込む貴族。勿論身分は高いのだが、何もかもを持ち前の財力で解決する輩が多く、かなりの身勝手さ故に周囲の人間は勿論、殆どの人間からは余り好印象に見られていない。少数派として、財力で善行を行う貴族も居るが、貴族全体が極めて悪印象的なので、周囲の理解を得るのには多少の時間が掛かる。
で、クローラクロスの住民にエーリの部屋が借りられてしまったと言うわけだ。しかも空いてる部屋が無いとすれば、必然的に俺とエーリ、同室で一夜を共にする事になる。そうなれば前回と同じで、どっちかが寝て、もう一方が廊下で待機。俺は明日武闘大会に出場するので、睡眠を取らない訳にはいかない。となるとエーリが廊下で待機する事になってしまう、女を廊下に立たせて男は寝る、それはちょっとどうなんだろうか? だが流石に年頃の男女が同じ部屋ってのは何だかなぁ・・・・・・。
「それがねぇ、最近、武闘大会に参加する人や、それを観戦する人達でこの街も更に賑わってきていてね。何処の宿も満室で、空いてる所といえば相当にボロっちぃ宿ぐらいなもんだよ。ウチも例外じゃなくてね、既に満室って訳さ」
「・・・・・・という事なんだが、エーリどうする?」
「どうすると言われても・・・・・・。やっぱり一緒の部屋で泊まるしか・・・・・・」
「俺としても今日は休みたいし・・・・・・、どうしたもんかなぁ?」
顎に手を当てて考えてみる、取り敢えず一通りは考えついたがどれも却下。俺は明日武闘大会があるから休まないといけない。エーリは一応女子だし、年は聞いていないが多分俺より年下だろうから、年輩として部屋を譲るべきなんだろうけど・・・・・・。あー、全く誰だよ部屋を住民だからって借りた奴は、顔が見てみたいわ。
そう思い、溜め息をついた時だった。
「はっはっは! また会ったね誠!」
薄い茶色の髪をさらりと掻きあげながら登場したのは、ついさっき別れたばかりの英介だった。てゆーか店はどうしたんだ?
「何でここに居るのかって顔だね? 実はだね、あの後このまま店を売ってしまうのはどうかと思って、知り合いに掛け合ってみたら直ぐに買ってくれたんだ。そんで必要な物だけ持って来て、宿に泊まろうとしたら何と満室。それで仕方なく住民の権利を有効に使って旅人だか冒険者だか知らないけど、その人の部屋を借りたんだ。それでいまここね」
「誰もそんな事聞いちゃいねぇ。てゆーかお前が原因か」
「へ? 僕が何かした?」
心当たりがないと言った表情で、首を傾げる素振りを見せる。
「お前が部屋借りたせいでエーリの寝る場所が無くなったんだ、俺は明日武闘大会だから寝なきゃいけねーし。それでどうしようか? って悩んでたらお前がひょっこり現れたんだよ」
あ。英介が借りた部屋、元はエーリの部屋だって言っちまった・・・・・・。
「はっ! 僕は気がついてしまったぞ!? 僕が借りた部屋は・・・・・・元々はエーリちゃんの部屋だったんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
コイツ余計なことを! 俺の魔剣の錆びとなるがいい英介! それか魔法で塵にしてやんよ!
「お前アレだ、アレだぞ? ベットとかにダイブして変態行動を始めたら直ぐに、血祭りに挙げるからな? 真面目に」
「すんませんでしたぁぁぁぁぁ!! 誠が言うとシャレにならないんですよ!」
今度は腰を90°に曲げて頭を下げてきた。今までコイツが変態行動を取る度に懲らしめた会が有ったとうものだ。さて、脅しては置いたからアホな事はしないと思うが、部屋をどうしようか? ・・・・・・確か街の住民はそこいらの旅人より優遇されるんだよな? ・・・・・・よし、良いこと考えついた。これを英介にやらせよう、コイツはこのクローラクロスの住民だからな。
「英介、ちょっと来い」
「何でございましょうか!?」
エーリを受付に残し、俺は英介の首根っこを引っ掴んで部屋の端っこに行った。全く人が居ないのは部屋に居るか、街に繰り出しているかのどちらかだな。まぁ、誰か居た所でこんな大騒ぎしてたら迷惑だろう。その点では運が良かったみたいだ。
「なぁ英介、交渉しようじゃないか」
「こ、交渉?」
「ああ。まぁ、聞け。取り敢えず英介が一部屋を借りる、街の住民ってのは旅人よりも優先されるんだろう? だったらこの宿にも何人か旅人何かが居るはずだ、まぁお前が一部屋借りる事によってそいつは追い出されちまうが・・・・・・。どうする? 部屋を一部屋借りさえすれば俺はその後何にも言わねぇよ? 、エーリの部屋に行こうが何を使用が口は出さない」
「・・・・・・借りてくる! やっぱり持つべきものは友だね!」
英介は目の色を変えて受付のおばさんの所に向かって突っ走っていった。くくく・・・・・・、欲に目が眩んだか・・・・・・。まぁ、何年も一緒に過ごしてきたからな、これぐらいは朝飯前よ。英介の操り方なんざとっくのとうに心得ているぜ。
「まったく。何で部屋借りんだよ、集合の約束した意味ねえじゃんか・・・・・・」
「やっほ~い借りてきたよ、これ部屋の鍵ね。それじゃ僕は色々と準備があるから部屋に行くよ」
そう言うだけ言って俺に部屋の鍵を渡し、気持ち悪いほどのニヤけ顔で階段を上っていった。さて、そんなこんなで漸くゆっくりと、ちゃんとしたベットで寝られるな、何時ぶりだろう? 確かフィンシア城で一度だけ寝たっきりだっけか? その後馬車の中だったからな・・・・・・、まぁ今日は明日に備えて早めに眠るとしよう。
エーリ居る受付へ戻り、話しかける。
「よし、エーリ。俺は明日に備えてもう寝るからな? 英介の奴が絶対何かしてくるとは思うが、まぁ今日のところは耐えてくれ。そんで明日起きたら報告してくれ、徹底的に滅するから」
「分かりました、何も無いと良いんですけど・・・・・・」
「絶対にある、無い訳がない」
「絶対ですか・・・・・・」
今まで無かった試しがない、現に姉さんの部屋に忍び込んで『戦利品をゲットした!』と言って姉さんの下着を持ってきたこともある。無論、俺と姉さんでボコボコにしたがな。
「それじゃ、また明日な」
「はい、また明日」
別れの挨拶を交わし、俺達はそれぞれの部屋に戻った。
その後、運ばれてきた夕食を食べている時。英介が部屋に入ってきて『エーリちゃんの部屋覗かない?』とぬかしやがったので、渾身のラリアットを食らわせてやった。部屋に行こう、ならまだしも部屋を覗かない? はないだろ。いや、どっちにしろラリアットを食らわせるんだがな。
それと、英介が俺の部屋を借りた事で追い出された冒険者がトボトボと宿を出ていくのを見た、取り敢えずスマン。俺が悪いんじゃない、全ては英介の責任だ。だから恨むなら英介を恨め。
英介がエーリの部屋に侵入したかは分からなかったが、明日の朝にでも報告してくれるだろう。まぁ、流石に他の人も居るって事で英介も自重はしているのだろう、それはそれで良いことだ。・・・・・・はっ! まさかアイツ・・・・・・宿に泊まってる美人さんにナンパとか仕掛けてたりするか? 確かにアイツ美人美少女は性格とかが何であれ、見境無くナンパ出来るが・・・・・・、可能性としては有りうるな。
「全く、アイツの性格はもう少し何とかならんもんかねぇ?」
部屋の窓を開け、美しく光り輝いている月の光を浴びながら俺は愚痴った。白衣をベットに脱ぎ捨て、いつもの着なれた制服が露になる。制服で思い出したが、前に姉さんが学校指定のセーラー服を見たら凄く似合っていた、少し幼く見えたというか、でも姉さんの正確が少しばかり子供っぽいので逆にお似合いというか・・・・・・。まぁ、よくあることだろう。美人が服を変えただけで別人の様になるってのは、姉さんの場合はそれの幼く見えるバージョンだな。
姉さんのセーラー服姿、あれずっと写真にしてポケットに入れてたっけ、でも運悪く机の上に置いてきちまった。また姉さんに頼んで撮らせてもらおうかな? でも携帯電話が無い、それに姉さんに会えないんじゃどうしようもない。
・・・・・・もうこの事を考えるのは止めよう、今は姉さんの事を考えると何だかネガティブになってくる。何か気分転換になる物は無いか? 今はどうにかして気を紛らわしたい。
「入っていい? 誠」
急に扉が開く音と英介の声が聞こえたので、振り返ってみると、入っていい? と聞いているのに既に入ってきている英介の姿があった。そういえば鍵を掛けるのを忘れていたな、英介が入ってくるなら閉めて置くべきだったか・・・・・・。
「既に入ってきてるだろう」
「いや開いてたからね」
やっぱり鍵を閉め忘れていたか、今度からしっかりしないとな。
俺はベットに座り、英介はテーブル付近にある椅子に腰掛けた。さて、今度は何の話だろうか? 俺は兎に角気が紛れればいいから、何の話でも聞いてやろう。
「で? ここに来たってことは何か話をしに来たんだろ?」
「まぁそうなんだけどね。今日は折角感動の再会を果たしたんだから、何かの話で盛り上がろうと思ってね。勿論、話の内容は考えてあるよ」
「その内容は?」
試しに聞いてみると、英介はニヤリと笑い。そして、高らかに言い放った・・・・・・。
「勿論! 女の子にはどんな服装が最強なのかっ!!」
如何にも英介らしい、まぁ、今回は何も言わずに素直に参加してやろう。何時もは不参加だったしな、今日ぐらい良いだろう。で、服装ねぇ・・・・・・、これは個人的な意見でいいのか?
「まず僕から。やっぱり服装はセーラー服でしょう! これが最強だね!」
セーラー服、まぁその意見には賛成だが・・・・・・、まだまだだな。俺のランキングトップ3にも入っていないな。俺的に女の子ってのはパジャマに巫女服にメイド服、この三択・・・・・・いや三着が最強だ。ちなみにセーラー服は惜しくも五位だ、四位は水着な。
「ふっ、甘いな。最強はパジャマに決まっているだろう、少し着崩れているとなおよし」
「いいやセーラー服だね、これは日本の文化だ! 宝だ! そして青春だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
両手を広げ叫ぶ英介、だが認めんぞ! 貴様には最強はパジャマだと理解できないようだな、なら分からせてやるまでだ!!
「確かにセーラー服もいい、だがそれはうちの学校じゃ毎日のように見れただろう? だがパジャマは別格だ、あれを生で着用しているのを拝むのは相当難しい、だがそれもだ、姉さんのパジャマ姿は毎日見れただろう?」
「・・・・・・美咲さんのパジャマ姿には僕も初めて見た時は鼻血を吹き出しそうになったよ。でもセーラー服なら毎日見れてお得じゃないか! 美咲さんのパジャマ姿もだけど! それにセーラー服ならではの大技であるパンチラが拝めるじゃないかっ!!」
そこは盲点だった! 確かにセーラー服はパンチラが期待できるが、パジャマは下がズボンなためにパンチラが出来ない。だが! パジャマの着崩れた時には恐ろしいほどのエロスを感じさせる! それがセーラー服には出来ないんだ!
「てゆーかセーラー服は・・・・・・」
「ぐふぅ! それを言うとは・・・・・・」
この雑談は日が変わるまで続いていた。時には殴り、時には和解し、時には不毛な言い合いが飛び交った。それらが終わると、英介は部屋に戻り、俺はベットの中に潜り込んだ。
明日は武闘大会だ、まぁ俺と英介がタッグを組んだら最強だろう。そう思いながら俺は布団を被り、眠りについた。だが俺達は、これから起こるであろう出来事に巻き込まれる事を知らずに、お互い朝を迎えた・・・・・・。
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