声の音
帰りの空港で階とバイバイしてからは土日に入り、LINEを一応繋いだものの階はバイトにバンドに忙しいらしい。
ただ、毎日少しの時間でも
バイトで疲れていようが
22時過ぎに必ず電話をくれる。
それは、本当にご飯を、食べる。お風呂に入る。保湿クリームを塗る。歯磨きをする。
そんな日々の無意識なルーティンの中にスッ
と。溶け込んだのだった。
今日の話は、なんだったかな
あ、そうだ
階のバイト中、店長が客と注文した物が間違ってるとか、なんとかで小競り合いになったらしい。
「もうほんまやめて欲しいわーそれから店長機嫌悪いしさぁ。おちゃらけもできんわ」
バイトといえど、責任持って働くということは大変ということは、頭ではわかっていたけれど、階の話を聞くと、身に染みて感じる
「あ、秋音。明日は夜スタジオ入るわ」
「そうなんだね、ねえ今度階の曲聞かせて欲しいなー」
「今練習してるやつ、うまなったらな!」
向こう側に、階のはにかむ笑顔が見えた。
「階はすごいなぁ。私なんて今日学校帰って何にもしてないよ」
「学校行っただけで偉い偉い。
俺今日寝坊して、3限からやもん」
「えー!お腹痛いからって行ってたじゃん!
心配したのに!」
「ごめん、ごめん」
向こう側で階の笑い声が聞こえる
心に出来る
ずんっと重い鉛のような感情を
いつも階はどこかへ飛ばしてくれる
私は階の心を軽くできているだろうか
そんなことを思いながら歯磨きをしようと一階へ降りた。リビングから母と父の声が聞こえて来た。
「あなた、向こうの女のところ行けばいいじゃない?貰うものはきっちり払って、秋音は私が育てますから」
「なんの話だよ、離婚はしない。秋音もお互いが居た方がいいに決まっているだろ。」
またこれか、、
もういっそのこと別れてくれたらいいのに。
いや、でも別れてお母さんと住むならお母さんの実家の関西に行くのか?
階と離れるのは嫌だな。
なんて、毎度な父母のやりとりに冷淡な感情しか出ない自分に驚きつつ。歯磨きを終え、寝床へつく。
階からLINEが来ていた。
「秋音、おやすみ」
の文字と可愛い猫のキャラクターのおやすみスタンプだった。
「おやすみ、階」
あえて、変な某人間が踊っているおやすみスタンプを送った。
きっと階は今頃、ふっと口角が上がっているはず。




