第五章 美食家の楽園、春色のストリートデート
「今日は町に新しい市場が開くんですって!」
リアナが元気よく厨房に飛び込んでくる。
「姉さん、そんなに騒がなくても聞こえてますよ」とリディアがため息まじりに続いた。
ジロウはエプロンを外し、「せっかくだし、みんなで行こうか」と提案する。
「え、わたしも?」とエレシアは少しだけ驚いた顔。「当然だろ。店のスタッフも、魔王も、たまには町に出て刺激を受けるべきだ」
「ふん。まぁ、みんなが行くなら付き合ってやる」エレシアは腕を組みつつ、頬を少し赤くして立ち上がった。
春の光が差し込む町のストリートは、屋台や露店で大賑わい。
リアナは「うわっ、かわいいアクセサリー!」と目を輝かせ、
リディアは「この本屋さん、珍しい魔導理論書がありますね」と静かに本を吟味する。
エレシアは、品物のひとつひとつにじっと目を細めては、「魔界にはないものばかりだな。…この果物、どんな味なんだ?」と独りごちる。
ジロウはそれぞれに寄り添い、リアナには髪飾り、リディアには栞、エレシアには珍しいフルーツの盛り合わせを手渡す。
エレシアは驚きと戸惑いが交じった顔。「……なんだこれは。私にくれるのか?」
「旅先の思い出って、意外とこういうのが一番残るんだよ」
「べ、べつに嬉しくなんか……ないこともない。お前、こういうの慣れてるな」エレシアは視線を逸らし、頬を染める。
途中、ミナトやリサ、シャルロッテとも合流し、みんなで食べ歩きをしたり路上パフォーマンスに見とれたり。
「これが普通の休日なんだな」とミナトが感心し、
「普通って、案外一番幸せなのかも」とリサも頷いた。
ふと、エレシアがそっとジロウの袖をつかむ。
「おい、ジロウ。…その、もう少しだけ町を案内しろ。別に迷子になりそうとかじゃないけど」
リアナが「ずるいー!私も一緒!」と割り込み、
リディアも「姉さん、空気読みましょう」と小声で諭す。
みんなで歩く道は、少し照れくさく、どこか温かかった。
買い物を終えた一行は町外れのカフェでひと休み。
「今日一日、すっごく楽しかったな!」とリアナが席に身を預ける。
リディアは新しい本をパラパラめくりながら「こういう休日も、悪くないですね」と微笑む。
ジロウが「これからも、みんなでいろんな町を歩こう」と言うと、
エレシアはカップを両手で包み、「……ふん。まあ、悪くはなかった。いや、けっこう好きだ。だが、また誘え。お前ひとりじゃどうせトラブルに巻き込まれるだろうしな」と視線をそらす。
シャルロッテが「次はお菓子巡りしましょう!」と盛り上げ、
リサも「カフェめぐりデート、いいですね」とほほえむ。
日が暮れ、ジロウが「さ、そろそろ帰るか。今夜は新しい食材でスペシャリテを考えよう」と立ち上がる。
リアナが「ジロウさん、どんな料理になるの?」とわくわく顔で問うと、
「帰ってからのお楽しみ」とジロウはにやり。
帰り道、エレシアがまたジロウのそばに寄る。
「……なあ、ジロウ。また一緒に出かけてもいいよな?」
ジロウは優しく微笑み、「もちろん、何度でも」と応える。
「そ、そうか。…お前がいないと、なんだか物足りないからな」とエレシアは小さな声でつぶやいた。
春の夕焼けの下、ヒロインたちとジロウは、ちょっとだけ心の距離を縮めながら店へと帰る――。