第四章 美食家の楽園、王女たちの来訪と異種族交流パーティ
朝の「美食家の楽園」は、普段以上に活気と緊張に包まれていた。
厨房では、ジロウが「今日は王女様たちが来る日だ。みんな頼むぞ!」とスタッフに声をかけている。
勇者見習いの双子、リアナとリディアは、メイド服のリボンを直しながら顔を見合わせた。
「ねえリディア、私、今日こそ一番輝いてみせるから!」
「はいはい、姉さんはいつも通りでお願いします」とリディアは小さく笑う。
カウンターでは、黒髪ロングのウェイトレス服に身を包んだ魔王エレシアが、静かにエプロンの紐を結んでいた。
リアナがそばに寄ってくる。「エレシアさん、本当に今日は一緒に働いてくれるんだね?」
エレシアは少し照れた様子で、でもしっかりとうなずく。
――きっかけは数日前の魔王城。
魔王として生きてきたエレシアは、ジロウの料理や人柄、町での出来事に触れて、初めて「戦いだけが人生じゃない」と思い始めていた。
そんな気持ちを察したジロウが、
「エレシアさん、よければ“美食家の楽園”で一緒に働きませんか?王や魔王じゃなくても、人の笑顔や声を近くで感じられる。新しい発見があるかもしれません」
と声をかけたのだ。
エレシアはその夜、悩んだ。
「私は魔王として生きる運命かもしれない。でも、それだけが私の人生じゃない。もっと人と関わってみたい――」
そう決意して、今朝、静かにウェイトレス服に袖を通したのだった。
「不安はあるけど……皆と同じ目線で世界を見てみたい。それに――ジロウやみんながいるなら、大丈夫な気がする」
エレシアはそう言って、リアナとリディアに微笑みかける。
「素敵だよ、エレシアさん!」リアナが手を叩き、リディアも「私たちも精一杯サポートします」と心強く答えた。
ジロウも「エレシアさんが加わってくれて、きっと今日の“楽園”はいつもより明るくなる」と心から歓迎した。
*
やがて湖畔の道を王都からの馬車が進み、第一王女アリシア、第二王女セシリア、第三王女マリア、勇者ミナト、リサ、シャルロッテが次々と降り立つ。
「皆さん、今日のために集まってくださってありがとう」とアリシアが穏やかに声をかける。
ミナトは「町でみんなと普通に食事できるなんて、夢みたいだ」と目を輝かせている。
「ようこそ、美食家の楽園へ!」
ジロウが明るく出迎える。
「いらっしゃいませ!」とリアナとリディアが息を揃えると、マリアが「本当にメイド服なんですね、素敵!」と歓声を上げた。
席に着くと、自然と円卓にみんなが集まり、エレシアもウェイトレスとしてワインを注ぎながら「本日は精一杯おもてなしします」と控えめに頭を下げる。
まず運ばれたのは、思い出のポトフ。
リサがスプーンを口に運び、「懐かしい…母の味に似てる」と涙ぐむ。
アリシアは「家族で食卓を囲むことがこんなに温かいなんて…」と静かに言葉を継ぐ。
続く魔界のスパイスグリルチキンには、シャルロッテが「初めて食べる味だけど、癖になりそう!」と頬を緩める。
セシリアも「不思議な香り…だけど食べるたびに元気が出てくる」と笑う。
湖魚の香草焼きには、ミナトが「小さい頃、家族で釣った魚の味を思い出した」としみじみ。
リアナが「姉妹で釣った魚も最高だったよな!」と叫ぶと、リディアが「姉さん、その時は川に落ちましたよ」と即座に突っ込む。
みんながどっと笑いに包まれた。
ジロウは「どんな料理も、人と人を繋ぐ力がある。今日は、みんなが“帰ってきたい場所”を作りたいんだ」と言う。
マリアが「王都にもこんなお店があれば…毎日通っちゃうのに」と頬を染める。
エレシアはお皿を片付けながら、「私もこの場所を守りたいと思いました」と静かに告げる。
アリシアが真剣に「なら、これからも一緒に町を支えてください」と優しく返す。
宴も終盤、アリシアがグラスを掲げて「ジロウさん、あなたのおかげで私たち皆、この約束を果たせました。ありがとう」と言い、皆が笑顔で乾杯した。